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2008年11月 7日 (金)

男と女の成り立ちを探る福岡伸一著『できそのないの男たち』を読む

昨年、『生物と無生物のあいだ』でサントリー学芸賞を受賞した福岡先生の新著が出たと新聞で知った私は、すぐさま書店で買い求めた。前著『生物と無生物のあいだ』が、生物とは、生きているとはどういうことかについて、分子生物学の歴史や、その中での研究者たちの生き様も交えて興味深く語った作品だったのに対して、光文社新書の2008年10月の新刊として出された本書『できそのないの男たち』は、生物学の立場で見たときのオスとメスの違い、人間においては男と女の違いがどのようになっているのかを、前著のように自らの体験、学界での研究の歴史、その人間ドラマも交えて語ったものである。



著者曰く、昆虫のアリマキには、春から秋にはメスしか存在せず、メスがメスを産む。冬を迎える時だけ、メスばかりを生んでいたメスが急にオスを産み、オスとメスが交尾をし産卵し越冬する。無事に冬を越えると、卵から孵化するのは全てメスで、またメスだけでメスばかりを産み続ける。

男の立場から見ると、「アリマキのオスは何のために冬を迎える時にだけ産まれるのか?」と思ってしまう。

著者は「強い縦糸と細い横糸」という節を設けて、その疑問に答えてくれる。

「母が自分と同じ遺伝子を持つ娘を産むこの仕組み、すなわち単為生殖は、効率がよい。今でも単為生殖で増殖している生物はアリマキを始めたくさん存在する。好きなときに、誰の助けも必要とせず子どもを作ることができる。現在、二つの性を持つ生物がその一生を費やさねばならないコートシップの営為、つまり生殖にいたるための様々な面倒な手続きが一切不要であるから。
しかし、この単為生殖のシステムにはひとつだけ問題点があった。自分の子どもが自分と同じ遺伝子を受け継いで増えていくのはよい。しかし、新しいタイプの子ども、つまり自分の美しさと他のメスの美しさをあわせ待つような、いっそう美しくて聡明なメスを作れないという点である。環境の変化が予想されるようなとき、新しい形質を生み出すことができない仕組みは全滅の危機にさらされことになる。(中略)
メスたちはこのとき初めてオスを必要とするようになったのだ。
つまり、メスは、太く強い縦糸であり、オスはそのメスの系譜を時々橋渡しする、細い横糸の役割を果たしているに過ぎない。生物界においては普通、メスの数が圧倒的に多く、オスはほんの少しいればよい。アリマキのように必要なときにだけ作られるものある。(中略)
ママの遺伝子を、誰か他の娘のところへ運ぶ「使い走り」。現在、すべての男が行っているのはこういうことなのである。アリマキのオスであっても、ヒトのオスであっても。」(福岡伸一著『できそこないの男たち』183から184ページ)

自分の母親の顔を思い出し、妻と子ども3人を見て、そういうことかと改めて思った次第である。3人の子が、激動する現在の世界で生き抜き、生き残る力を備えていることを祈るのみである。

<関連する記事>
2008年4月15日:福岡伸一著『生物と無生物のあいだ』を読み始める
2008年4月17日: 生命の不思議を感じさせてくれる福岡伸一著『生物の無生物のあいだ』を読み終わる
2008年4月20日:福岡伸一著『プリオン説はほんとうか?』を読み始める

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