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2008年12月19日 (金)

2008年第21期竜王戦渡辺明竜王vs羽生善治名人の世紀の決戦の余韻、読売新聞朝刊の梅田望夫氏のコラムから

1面の中ほどに、渡辺竜王の小さな顔写真とともに「渡辺、初代永世竜王に」との見出しに、「3連敗から羽生を逆転」との小見出しで渡辺竜王のタイトル防衛と5連覇による永世竜王資格獲得を伝え、24歳7ヵ月での永世称号獲得は、中原誠永世棋聖の23歳、羽生善治永世棋王の24歳5ヵ月に次ぐ記録であることを伝えている。
38面(社会面)には、第7局2日めの棋譜と、勝者渡辺竜王の満面の笑顔の、敗者羽生名人の無念の表情を対比させている。

将棋ファンから見た今日の朝刊の必読記事は、18面(文化面)に載せられた、パリでの第1局でもネット観戦記を書いた『ウェブ進化論』の著者梅田望夫氏の“「永世竜王」誕生”と題したコラムだろう。
パリの第1局で、挑戦者の羽生名人が、渡辺竜王を含め棋士の誰もが渡辺竜王有利と思う、しかし羽生のみが自らが有利と局面と考える局面に渡辺竜王を誘導し、圧勝し、自らの大局観が正しいことを示したことを語る。

終局後のパリのカフェで、「僕の将棋観が根底から覆されたんだ。僕だって読めていた手、でも初見で捨てた手、僕にとっていちばんあり得ない手が最善手だった。僕の将棋観が否定されたんです」と語る渡辺の悄然とした姿を見つめながら、羽生がねらいすまして渡辺の急所をざっくり斬ったのだ、私はそう思った。
「シリーズ中盤でこれをやられていたら、もう終わりだったですよ。第一局でよかったと思わなくてはいけませんね。立て直せる時間があるかもしれない」(中略)
それから二ヶ月、第一局の衝撃の余波もあって三連敗を喫した渡辺だったが、第四局は強靱な精神力で復活し、新境地の将棋を指した。どん底に置かれたときに自らの回復までの時間を正確に推定し、言葉通りに将棋を立て直し「復活の四連勝」で竜王位を防衛した渡辺は、本当に見事だった。」(2008年12月19日、読売新聞朝刊18面)

パリのカフェで渡辺竜王の復活に向けてのひと言は、竜王位防衛を果たしたからこそ明かされたエピソードだろう。羽生名人は、自らの永世竜王位獲得・永世七冠達成に向け、初戦から容赦なく渡辺竜王の急所を突いてきたのであろう。それは、将棋界のトップを極めた先人として、自らに英知を絞った一撃だったに違いない。それは、14歳年下の渡辺竜王に対して、「今自分がいるところまで、君は這い上がって来られるか?」という問いかけでもあったのだと思う。
それに対する渡辺竜王の答えが、3連敗後の4連勝。

読売新聞一面のコラム「編集手帳」には、次のように書かれている。

「郷里で“神童”と騒がれた少年たちの一部が選ればれてプロになり、ほんの一握りがタイトルを手にする。「永世」の称号となれば、気の遠くなるような天の高みである。(中略)3連敗後の4連勝は将棋のタイトル戦の歴史で初めてという。「すわ逆転か」「いや再逆転かと最後の最後まで優劣不明だった最終局は、激闘譜として語り継がれるだろう」(2008年12月19日、読売新聞朝刊1面)

将棋会館で第7局の大盤解説を担当し、渡辺竜王の竜王戦5連覇の中で挑戦者として二度戦った佐藤康光棋王は次のように語る。

「この将棋は渡辺さんは負けを覚悟していたと思う。そこであきらめないで気持ちを切らさず指したことが羽生名人のミスを誘った。歴史に残る将棋でしたね。二転三転したと思いますが、並べているだけで両者の想いが伝わる。劇的な幕切れで、互いに実力、運、執念、気力などあらゆるすべてのものを取り入れた結果、渡辺さんが4勝3敗の僅差で防衛しましたね。おめでとうございます。すごい将棋、すごいシリーズでしたね。私もまた頑張りたいと思います」
「渡辺さんが3連敗をしたときは、どうなるかなと逆の心配をしていましたが…、しかし、やはりすごいですね。ただ感嘆するよりないですね。すごいの一言以外に言葉が出てこないですね。普段、人の将棋で寝付けないというのはないが、今日は興奮して眠れないかもしれない」
2008年12月18日竜王戦中継ブログ「竜王戦中継plus」より)

今後に余韻を残す第21期竜王戦七番勝負だった。

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» 七番勝負が残したもの [即席の足跡《CURIO DAYS》]
何ということでしょうか。 3連敗のどん底から、一気に4連勝。 史上初の快挙で、「永世七冠」などという途方もない仕事をしにやってきた最強の挑戦者を退け、5連覇で防衛、史上初の永世竜王位を獲得しました。 森内、佐藤2回、羽生、と、羽生世代最強トリオが含まれての5連覇というのはなまじの5連覇ではないです。 一般マスコミまでが大騒ぎするこのような歴史の1ページに立ち会うことができ、将棋ファンとして、本当に幸せでした。 そして、 あまりに戦前に興奮して騒ぎすぎたこともあり、今は静かに、じわじわと余韻... [続きを読む]

受信: 2008年12月21日 (日) 16時15分

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