渡辺明竜王の5連覇と「スラムダンク」の安西先生
竜王位防衛が決まった直後の渡辺明竜王のブログを読んでいたら、竜王の奥さんが「妻の小言」というタイトルで書いているブログへのリンクが張ってあった。竜王は、多くの人から「奥さんの絵がよかたんじゃないか」と言われたらしい。
リンクをたどると、そこには、将棋盤を挟んで、立っている安西先生と座っている渡辺明竜王が向かいあっているイラスト。安西先生が「あきらめたらそこで試合終了だよ」という、「スラムダンク」の中でも、一番の名台詞を語っている。
高校バスケットを題材にした井上雄彦の劇画『スラムダンク』は、90年代に大ヒットし、TVアニメにもなった。スラムダンクの舞台の湘北高校バスケット部には個性的なプレイヤーが集まるが、その中でも異彩を放つのが三井寿(みついひさし)である。
湘北高校バスケット部のキャプテン赤木、副キャプテン木暮の同級生。県の中学バスケットボール大会の優勝経験を持つが、湘北高校バスケット部入部後、膝を痛めバスケットができなくなり、その後は荒れて不良になり、バスケット部の後輩たちをいびるという鼻つまみものに成り下がってしまう。バスケット部の練習中に不良仲間とバスケット部の練習に殴り込みをかける。しかし、さんざん、暴れまわった三井が、あらわれた安西先生の姿を見ると、「安西委先生バスケがしたいです」突然泣き崩れる。殴り込みに来た不良が、実は最もバスケットを愛していたという劇的な展開となり『スラムダンク』の長いストーリーの中でも、最も印象に残るシーンである。安西先生の前で、不良の三井さえ泣き崩れてしまうエピソードがそこには隠されている。
三井がキャプテンとして優勝した県の中学バスケット大会決勝では、実は相手チームにリードを許し、ゲームセット寸前になっていた。その時、来賓席にいた安西先生の席に三井が追うボールが飛び込む。そのボールを三井に手渡すときに、安西先生が語ったのが、この「あきらめたらそこで試合終了だよ」の言葉である。それに奮起した三井は、そこから逆転のスリーポイントシュートを放ち、中学チャンピオンの座を手にする。安西先生の励ましに感動した三井は、湘北高校に進学し、バスケット部に入部したのだ。
この「あきらめたらそこで試合終了だよ」との精神は、『スラムダンク』全編に流れるメッセージでもある。弱小だった湘北高校が桜木花道という破天荒、型破りは素人と超高校級の流川楓という1年生二人を迎えたことでなんとかチームの体裁を整え、県のインターハイ出場常連校に挑む中で、常にあったのは「あきらめない」という姿勢であったように思う。
渡辺竜王の奇跡の逆転防衛の陰に、『スラムダンク』の安西先生の一言が隠されていたとは、『スラムダンク』ファンとしては、うれしい限りである。
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