第50期王位戦挑戦者決定リーグ紅組最終戦での木村八段の全勝を阻止した郷田真隆九段の勝利は、名人戦につながる貴重な1勝
一昨日(2009年5月29日)に行われた王位戦挑戦者決定リーグ最終戦の結果で、私が個人的に最もうれしいのは、私が応援している郷田真隆九段が、紅組で4連勝とトップを走っていた木村八段を破り、存在感を示したことである。
郷田九段は、3月3日のA級順位戦9回戦で同じ木村八段を破り、7勝2敗で名人挑戦を決め、現在名人戦七番勝負で羽生名人と死闘を繰り広げているが、順位戦で木村八段に勝って名人挑戦を決めた後は、不調に陥り、年度をまたいで12戦で2勝10敗。勝ったのは名人戦での羽生名人に対する2勝だけだった。郷田九段がこれほど勝てないのは、棋士になって初めてのことではないだろうか。
棋聖戦、王座戦、竜王戦と挑戦者の可能性を残していたタイトル戦の予選でことごとく敗退。王位戦挑戦者決定リーグでも挑戦権獲得の目はなくなっていた。
王位戦挑戦者決定リーグ戦紅組の最終戦も、相手の木村一基八段にとっては勝てば紅組全勝優勝で挑戦者決定戦進出が決まるが、負ければ羽生名人の結果待ち(羽生勝ちで紅組プレーオフ)という大事な一戦。一方、郷田九段にとっては、王位戦リーグ残留の紅白各組の上位2名の可能性もなく完全な消化試合。
しかし、将棋連盟の米長会長が現役時代、「相手にとって大事な勝負ほど、全力をあげて勝ちにいくべき、そうすれば、自分にツキが巡ってくる」という趣旨のことを書き、後輩棋士に大きな影響を与えた。当然、郷田九段も手を緩めることはない。
思えば、昨年(2008年)12月の王将戦挑戦者リーグの最終戦でも同じようなことがあった。2勝3敗ですでにリーグ陥落が決まっていた郷田九段は、3勝2敗で最終戦に勝てばプレーオフ進出となる佐藤康光棋王と対戦。見事に勝って、佐藤棋王をプレーオフから引きずり下ろし、丸山忠久九段のと3勝2敗対決に勝った深浦康市王位が挑戦者となった。
その後郷田九段は10戦して9勝1敗と絶好調で、その間A級順位戦では森内九段、三浦八段、木村八段と難敵を3人を撃破して名人挑戦を決めた。
一方、佐藤康光棋王は、20戦して11勝9敗とやや黒星も多く、久保利明八段の挑戦を受けた第34期棋王戦五番勝負では、2連敗後2連勝と持ち直したものの、最終戦に敗れ「棋王」タイトルを久保八段に明け渡すことになった。
王位戦挑戦者リーグは、結果から見れば、紅組で2番手につけていた羽生名人が渡辺竜王に敗れたため、郷田九段に敗れた木村八段が紅組優勝を決めたが、全勝者に黒星をつけ、一矢報いたことは、名人戦第4局での鮮やかな勝利に続き、郷田九段の復調を示すものだろう。
郷田九段が、木村連勝特急からつかんだツキを生かす場は、羽生名人との名人戦である。当面、他のタイトル戦の予選もなくなり、名人戦に全力投球できる環境となった。一方、羽生名人は、6月9日から木村八段の挑戦を受ける第80期棋聖戦五番勝負も始まり、二正面作戦を迫られる。
2勝2敗と拮抗する第67期名人戦七番勝負も残すところ、あと3局。郷田九段には、今回の勢いを生かし、第5局、第6局と羽生名人に2連勝して4勝2敗で名人位奪取を決めてもらいたい。
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