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2009年6月 4日 (木)

谷川浩司九段が『将棋世界』観戦記で語る第67期名人戦第3局での郷田真隆九段の姿

昨日(2009年6月3日)、日本将棋連盟の月刊誌『将棋世界』の2009年7月号が発売になった。

7月号の目玉は、引退した中原16世名人へのQ&A形式でのインタビュー、社会人からの特別奥別編入試験から3年半でフリークラスからC級2組への昇級を決めた瀬川晶司四段にインタビュー、昨年物議をかもした橋本崇載七段らの順位戦大予想など盛りだくさんだが、なかでも現在進行中の第67期名人戦のうち第3局の谷川浩司九段の観戦記が一番の売りだろう。

郷田九段にとっては、「谷川さんは私たちの世代が目標にしてきた棋士」(郷田真隆著『実戦の振り飛車破り』)であり、1992年には、棋聖戦と王位戦でタイトルに挑み、王位戦ではまだ棋士3年目駆け出しの四段ながら王位タイトルを獲得している。

まず、谷川九段は郷田九段の棋風や考え方について、

「横歩取り8五飛、藤井システム、ゴキゲン中飛車、一手損角換わり-。この10年で新戦法が次々と生まれる中、郷田は自分の姿を貫いてきた。
相手に誘導されることもあるので、もちろん研究はしているが、自分で指すことはほとんどない。
これらの新戦法は、いずれも従来の常識を覆す新しい発想であり、それだけに違和感もあった。
郷田はその感覚を大事にする。不自然な指し方は、必ずとがめられるはず、という信念である。
以前の郷田には、こうした新戦法にいら立ちが感じられた。だが、4年前にA級に復帰しからの成績は5勝、7勝(挑戦)、6勝、そして今期も7勝で挑戦。
A級で活躍することで、自分の考えは正しかったのだ、という確信も得られたのだろう。このところの郷田の戦い方には、自信と余裕が感じられる。」(『将棋世界』2009年7月号37ページ)

と紹介している。

福山での第3局は、劣勢といわれた将棋を郷田九段がしのいで、終盤に形勢を逆転、郷田勝勢とまで言われた中で、羽生玉の詰みを錯覚して、必勝の将棋を目前で再逆転された因縁の対戦である。

敗戦後の郷田九段の心中を察する谷川九段は、観戦記の最後を次のように締めくくった。

「終局直後のインタビューでは錯覚を語っていた郷田だが、これから感想戦。というときに一瞬、動きが止まってしまう。
ガックリ首をうなだれてタメ息をつき、駒を並べるのもつらそうだった。
3局続けての1分将棋。真摯に将棋と向き合う郷田の姿勢には胸を打つものがある。
つらい逆転負けではあるが、この気持ちを持ち続ける限り、いつかは将棋の神様が応えてくれるに違いない。そんなことを考えながら感想戦をみていた。」(『将棋世界』2009年7月号45ページ)

この観戦記を通じ、谷川九段の筆は、羽生名人よりも郷田九段について多く語っている。すでに、将棋界の代表として社会的にも広く知られる羽生名人よりは、実力がありながら、将棋ファンの中でも森内俊之九段(前名人)や佐藤康光九段(前棋聖)に比べてその棋風や人柄が十分知られていない郷田九段をこの機会に将棋ファンに知らしめようという先輩としての配慮もあったかもしれない。しかし、やはりこの第3局の将棋の内容そのものが、羽生名人が勝ったものの、郷田九段の側に見所の多い内容だったからではないだろうか。

タイトル戦、それも名人戦という棋士なら誰もが目標にする晴れの舞台での必勝の将棋を、自らの錯覚や見落としで敗れた時のつらさ、悔しさは、名人戦の大舞台に何度も登場し、おそらくは自身もそういう経験をした谷川九段だからこそ、わかるものだろう。

その谷川九段に「いつかは将棋の神様が応えてくれるに違いない」と語らしめた郷田九段の「真摯に将棋と向き合う姿勢」が、この名人戦で花開き実を結ぶことを祈ってやまない。

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コメント

将棋は辛いので。辛くあってほしいとも思います。

投稿: けとる | 2009年6月 6日 (土) 09時07分

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