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2009年6月 8日 (月)

勝間和代著『会社に人生を預けるな』、不確実な時代のリスク・リテラシーを語る

今年に入りTV、マスコミへの登場が増えた経済評論家の勝間和代。著作の出版も、急増している。彼女が勧めたことで、再び書店に並ぶようになった本もあり、ストレングスファインダーの生みの親であるドナルド・O. クリフトンその孫トム・ラスの著作『こころの中の幸福のバケツ』(日本経済新聞社)などもその1冊である。私が、以前、『さあ、才能に目覚めよう』など、ストレングスファインダーに連なる一連の著作を読みあさった時、この『こころの中の幸福のバケツ』はネット通販などでも在庫切れで、絶版状態だった。勝間ブームで、一気に出回るようになったのだから、その影響力は推して知るべしである。

私は、昨年1月に前々から書店の店頭に積まれていて気になっていた著者の『効率が10倍アップする新・知的生産術』(ダイヤモンド社)を、将棋のプロ棋士上野裕和五段が自らのブログで推薦しているのを見て読んだ。
内容は、現代版『知的生活の方法』といったところだが、特に印象に残っているのは、コンサルティング会社に入った著者が、「勝間の話していることはわからない」と言われたことを紹介しつつ、物事を考える上で「フレームワーク」がいかに大切かということを強調していた点である。先輩コンサルタントたちは、分析の枠組みである「フレームワーク」のない話は雑談としか受け止めなかったという。

すでに発刊されてから3ヵ月ほどたつ『会社に人生を預けるな』を今になって読んでいるのは、最近私自身が、「これまでのような会社のいわれるままに働いていれば、未来が約束されていた時代はもう終わったのではないか」という痛感していたからだ。

会社に人生を預けるな リスク・リテラシーを磨く (光文社新書)

著者は、これまでの日本の雇用の前提だった「終身雇用制」こそが、現在の日本の不振の原因としている。終身雇用制は、定年まで雇用を保証する代わりに、働き盛りの若手社員を働きより安いコストで使い、中高年になると働きよりも高いコストを払うことになるが、それは、高度成長時代のような社会も企業も急速に成長・膨張しているような時代、働きよりも割安で働かせる若年層が多く、働きよりも割高な中高年が少ない時期には成りたっtが、現在のような中高年の方が多くなっている時代には成り立たない。そのような時代に企業が雇用の調整弁として使われたのがコストの安い「非正規雇用労働者」である。辞めさせられない「正規雇用者」を守るため「非正規雇用者」が解雇される。
そのような環境の中で、あえいでいるのが現在の日本の姿といえるだろう。著者は、その解決策の一つとして「終身雇用制」の見直しの必要性について、様々な観点から分析し、述べている。

その一方、そのような「終身雇用制」が崩れざるを得ないであろう社会で今後生きていくために必要なのが、著者がこの本の副題(「リスク・リテラシーを磨く」)に掲げたリスク・リテラシーである。自分の身の回りにあふれるリスクを、発生の可能性と変動幅という観点から正しくリスクとして認識し、それをコントロールするリスク・リテラシーである。
これだけ経済の先行きが不透明な中では、企業もいつ倒産してもおかしくない。終身雇用の枠組みの中で、「会社に人生を預けてしまう」と、会社が倒産したときには、自分には何も残らないということになりかねない。終身雇用制の下で、一つの会社に勤め続けることになっていることを、多くの人は認識していない。リスクと認識できれば、ではそのリスクを最小限の抑えるための対策(コントロール)を考えることになる。

人が勉強をするのは、将来を予測し、リスクを的確に認識し、どう対処するかを考え、実際にコントロールするためという著者の説明は、これから学ぶ子供たちに対する最もわかりやすい「勉強する意味」だろう。

私自身は、すでに自分の働きより企業側が払うコスト(給料)が割高な中高年の世代に入っている。せめてコストに見合った働きはしたいと思っているし、「人生を会社に預ける」という気持ちは持たないでいたい。
果たして、自分が現在持っているスキルが、外に打って出た時に、客観的にどれだけの評価を得られるものなのか、なかなか知りえないところが辛いところだが。

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