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2009年7月20日 (月)

バレーボールに賭けた長男の中3の夏が終わる

我が家の長男は、中学に入ってバレーボールを始めた。たまたま、中学1年生で身長が170cmあり、同じクラスの中の良い友達がバレー好きで、誘ってくれたのがきっかけだった。当時、長男の中学の男子バレー部は人数も少なく、1年先輩は4名しかおらず、自分の身長なら、新チームになればすぐにレギュラーになれそうだったのも、目立ちたがり屋の長男にとっては、バレーを選ぶ理由の一つだったようだ。

しかし、新チーム2年生4名、1年生2名のギリギリのメンバーで、レギュラーにはなったものの、背が高いだけで、レシーブはできない、スパイクは当たらない、運よく当たっても行く先はボールに聞いてくれという状態だった。
なんとか、練習は続けたものの、チームの足を引っ張るお荷物的存在であった。それでも、先生や先輩たちは、懲りずに長男を使ってくれた。

長男が2年生の春、1年後輩が3名入部。バレー経験者ばかりで、余計に長男の下手さが目立つ。長男が後衛に回った時には、守備強化に1年生と交代させられることもあった。
結局、1年先輩のチームでは、ほとんど勝つことがないまま、2年目の夏のシーズンも終わり、1年先輩が引退、長男たち2人が最上級生となった。なんと、長男はいつも試合中声だけは出して、元気だけはよかったからか、新チームのキャプテンを務めることになった。
しかし、1年後輩が3人しかおらず、6人のチームが組めない。バレー部存続に危機である。このときは、体育の教師だったバレー部の顧問の先生が、長男と同級生の2年生で地域の野球と掛け持ちなら出てもよいという生徒と、1年生を一人勧誘してなんとか、人数をそろえ、危機を回避した。

その後も、危機は続く。バレー経験者の1年後輩から、威勢はいいものの実力が伴わない長男は、キャプテン・上級生としての信頼を得られなかったようだ。家では、後輩たちに対する不満をよく口にしていた。
その頃のチームは、個々人はそれなりに技術はあるのだが、チームプレーに必要なお互いの信頼関係に乏しく、やはり負け続けた。はた目から見れば、すでに身長が175cmを超えていた長男がエースとして相手を打ち負かすしか勝ちパターンはなく、とにかく長男にトスを上げ続けるしかないのだが、セッターを務める1年後輩は、長男をそこまで信頼はしておらず、チームが自分たちの勝ちパターンを作れず、ミスで自滅することが多かった。

チームが変わり出したのは、長男が3年生となり、1年後輩が2年生となり、新1年生を迎えた今年の4月からである。ギリギリの人数しかいなかったチームになんと新1年生が7人入部したのだ。長男に言わせると、後輩が入ったことで、自分たちも先輩となった2年生が、ようやく自分の言うことを聞くようになったという。自分たちも後輩を持つ身になって、初めて先輩の苦労がわかったということだろうか。

もう一つの転機がGWのさなかに出場した少し広めの地域の大会である。普段は自分の学校の近郊の地域の中学どうしの試合だが、このときは、いつもは対戦しなチームが集まった。もちろん、長男の所属チームはいいところなく負けたのだが、そこで、大会終了後、必死に声を出し、キャプテンとしてチームを引っ張る長男の姿を見て、ある学校の顧問の先生が、スパイクの打ち方を教えてやると声をかけてくれたらしい。そこで、ちょっとしたコツをつかんだようで、以来、長男のスパイクの決定率が一気に高くなった。

長男の中学最後の夏の大会は、6月の中旬から始まった。まず、地区のブロック予選。ここを1勝1敗で地区予選に進出。地区予選は6月末、8チーム中6チームまで都大会に出場できる。8チームを4チームずつに分けてリーグ戦を行い、それぞれ3位までが都大会に進める。
長男のチームは3位狙い。当初の予想通り、2敗を喫し、同じく2敗のチームと都大会をかけて戦うことになった。第1セット、シーソーゲームだったが後半長男のチームが突き放し、24対16でセットポイントを握った。しかし、ここから信じられないことが起きる。
あと1点が取れずに相手チームに迫られ、とうとう24対24のヂュースに。そこからは、取ったり取られたりを繰り返し、最後は32対34でほぼ手中にしていた1セットを落とした。
うーん、ここで心ならずも引退か。応援しているこちら側も、いやな思いがよぎる。第2セットもシーソーゲームだったが、中盤から突き放し、5点ほど差をつけて2セット目は取った。相手チームは1セット目を逆転したことで力尽きたのか、3セット目は2セット目以上に差をつけて、何とか都大会への最後のキップを手にした。

そして、今日が都大会の予選。都全域で64チームが都大会に出場。まず、8ブロックに分けて予選トーナメントが行われ、各ブロックの優勝チームが、都大会の決勝リーグに進出する。
長男たちの目標は都大会予選で1勝すること。今日の最初の試合が、ポイントである。出だし、相手に連続ポイントを許す。いつもの出足が悪いのは、長男のチームの悪いところである。目標の都大会出場で、緊張しているのだろうか。勝ち負けはどうでもいいが、自分たちの実力は100%発揮してほしい。
ようやくエンジンがかかったのか、徐々に差を詰めて逆転、第1セットをものにした。調子に乗ると、突っ走るのも、長男のチームの特徴で、第2セットはこちらの勢いに相手チームも萎縮したのか、ミスを連発。第2セットも取って、目標の都大会1勝を実現した。
その後の2回戦(都大会予選準決勝)では、格の違いもあり、敗退。長男のバレーボールに賭けた夏が終わった。

一時はチームの存続が危ぶまれ、信頼関係もなくバラバラだったチームが、都大会まで進み1勝をあげたことは、信じられない。長男を含む、中学生チームのメンバーそれぞれの成長を見せてもらった1年間だった。

長男の役目は、これからは受験生。こちらもバレーに劣らない成果を残してほしいものである。

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コメント

とてもいいお話でした。
やはり御子息のこととなると、いきいきとした筆致が冴え渡りますね
さすが拓庵さんの息子さんだなと思ったのは、よそのチームのコーチの人から声をかけてもらってスパイクのコツを掴んだというくだりです。息子さんの一生懸命さがそのコーチの心を打ったわけで、私も人の心を打つようなひたむきさを持ちたいものだと思いました。
受験のほうも、うまくいくといいですね!

最近の拓庵さんのブログには、ほんとに考えさせられることが多く、その度、感想を書き込みさせてもらおうかと思うのですが、何と言うか、自分の浅薄さが恥ずかしくて出来ずにいました。
今回は、ただただ感動したので書かせてもらいました

ところで名人戦は残念でしたね。郷田さんは、対森内戦と同様、ほとんどタイトルを手にしていたと思うのですが、不思議だなと感じたのは、振り飛車といった、郷田さんの将棋らしからぬ作戦を採用することです。番勝負なので、いろいろやらなければならないのでしょうか。
普通に指していれば、今ごろ名人三連覇していたのでは、というのは素人考えでしょうね

長々とすみませんでした。これからも楽しみにしています。

投稿: 淳 | 2009年7月21日 (火) 23時33分

淳さま、コメントありがとうございました。
お返事がおそくなり申し訳ありません。

長男のバレーの件は、備忘録として残しておこうと思って書いた話なので、お恥ずかしい次第です。
新チームになってからの1年間、応援席で見ながら、最初の頃は、はがゆい思いをすることが多く、せめて自分たちの実力が発揮できるチームになってほしいと思いながら、見ていました。
しかし、都大会の1回戦では、もてる力を十分に出せていました。子供たちの成長は、親の期待を超えていました。

郷田九段の今回第67期名人戦の戦いは、手に汗握るという感じで応援をしました。特に3勝2敗とリードしたとき、第3局でも実質勝っていたようなものなので、将棋の神様も今回は名人にしてくれるだろうと信じていました。郷田九段の勝機があったとすれば、第6局だったと思います。
どこへ逃げるかの選択で、あるいは名人になっていたかもしれない。将棋の言葉でいう指運というしかありません。
今回、郷田九段は名人を取りに来ていたと思っています。名人戦のさなか、他の棋戦では連敗が続きましたが、あれは、他の棋戦で名人戦で使う戦法をいろいろ試していたのではないかと思います。他の棋戦での挑戦は二の次にして、名人戦七番勝負にかけていた。第6局の陽動振り飛車も勝つための戦法だったと思っています。

2年前の森内名人との名人戦も激闘でしたが、今回はそれを上回る郷田九段の充実を感じました。これだけ羽生名人と戦えれば、他の棋戦でも4回めのタイトルを手にするのは、遠くないと思っています。

投稿: 拓庵 | 2009年7月27日 (月) 05時49分

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