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2009年9月 7日 (月)

団塊世代の社会学者上野千鶴子と1960年生まれの政治家辻元清美が現在の日本が抱える問題を語る岩波新書『世代間連帯』

民主党が308議席を獲得して圧勝した2009年8月31日の第45回衆議院選挙。選挙の前に読んだのが、岩波新書の2009年7月の新刊『世代間連帯』。
1948年生まれの社会学者上野千鶴子と1960年生まれの社会民主党の衆議院議員辻元清美の2人の現在の日本社会が抱える問題について語っている。

世代間連帯 (岩波新書)

最初にこの本を見たときは、「ああこの2人で書いたのか」と思った程度だったが、先週末、改めて書店で手にした時、上野氏が団塊世代の1948年生まれ、辻元氏が私と同じ1960年生まれという経歴を読んで、これは読んでみようという気になった。
私は、以前、自分たちの世代は、いつも団塊の世代の後始末ばかりやらされて、割を食っているという思いが強くあったからだ。団塊の世代の女性社会学者と私と同い年の論各の女性政治家。どういうやりとりが行われるのか、興味をひかれた。

語られるのは順に「仕事、住まい」、「家族、子ども、教育」、「医療、介護、年金」、「税金、経済、社会連帯」と続き、最後が「世代間連帯」。詳細は、本書に譲るが、私が最も印象に残った部分を1ヵ所だけ紹介しておきたい。

第2章の「家族、子ども、教育」の中で、上野千鶴子が次のように述べる。

戦後、日本は「教育の社会化」「医療の社会化」、そして「介護の社会化」を実現してきた。次は「子育ての社会化」の実現が社会の優先課題。(『世代間連帯』98ページ)

今回の選挙で有権者は民主党に圧倒的多数を与えたことで、何を選んだのか。何を実現することを託したのか。

ここで言われる社会全体で子育てを支援していく「子育ての社会化」は文字通り最優先課題だろう。

また、この本の中で二人が語ることを読んで思うのは、自民党の長期政権の中で社会の枠組みとなっていた企業を通じた間接的な社会政策の行き詰まったということである。
健康保険も、年金も、税制も、企業に勤めるサラリーマン世帯を中心に設計されているし、企業が富むことで、その余録がそこで働く従業員とその家族にも給与・賞与として行き渡った。企業の従業員と家族は同時に消費者でもあり、給与・賞与の増加は、可処分所得の増加、消費の増加、企業にとっての需要増加として好循環していた。
1990年代以降の経済の国際化、競争の激化により、企業には従業員に回す余録はなくなり、従業員もコストとしてしか扱われなくなった。給料は上がらず、いわゆる労働分配率は低下した。

一方、女性の社会進出に伴い、男性サラリーマン世帯中心の制度設計は、実態に合わなくなってきている。

企業を通じた間接的な世帯中心の社会政策よりも、企業を介さず、男女にかかわらず個人に対して直接政策な働きかけをしていく方が、個人ひいては社会の活性化に繋がるということなのだろう。小泉政権が推し進めようとした新資本主義的施策はあくまで企業を富ませるというアプローチでは、かつての枠組みになんら変化はなく、むしろ自己責任という名の下に、社会福祉施策の切り捨てを行ったということだったのだろう。

有権者が、高度成長時代でこそ成り立っていた制度の枠組みに組み替えを求めたのが、今回の選挙結果なのだろう。「子育ての社会化」という問題も、かつては、企業に下にある世帯・家庭に任されていたが、いまや、世帯や家庭だけでそれを引き受けるには荷が重すぎるということなのだと思う。

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