将棋第81期棋聖戦決勝トーナメント1回戦第2局、郷田真隆九段が屋敷伸之九段を破りベスト8進出
2009年度の将棋界の幕開けのイベントとなる第67期名人戦七番勝負では羽生善治名人をカド番まで追い詰め、おおいに盛り上げた郷田真隆九段。
しかし、その名人戦七番勝負を3勝4敗と惜敗したあとは、不調をかこっている。2007年度は49戦33勝16敗勝率0.6735、2008年度は47戦28勝19敗勝率0.5957の成績を残してきたが、2009年度は黒星先行で勝率4割前後のラインでとどまっており、棋士になって初めて年間での負け越しが濃厚になってきている。
これは、名人戦七番勝負前後に名人戦も含め2008年度末からの5連敗のうちの2敗、5連敗と4連敗という連敗の「こぶ」があるのが響いている。ここをせめて5勝6敗で乗り切れていれば、最低勝率5割はキープできていたはずである。この連敗は主に、名人戦と同時並行で進行していた棋聖戦挑戦者決定トーナメント、竜王戦ランキング戦、王位戦挑戦者リーグなどでのものである。
ご本人に聞いたわけでも、棋譜も入手できないのでいい加減なことは言えないが、名人戦終了までの黒星の中には、勝敗を度外視して名人戦での戦法を実戦で試したものも含まれているのではないかと思っている。
しかし、名人戦では5局を終えて3勝2敗と羽生名人を追い込んだあと、あと1勝が及ばなかった。
名人戦での敗戦がショックだったのか、その後の敗戦は、日本シリーズ1回戦で行方尚史八段に、テレビ棋戦の銀河戦本戦1回戦で橋本崇載七段に、挑戦者リーグ入りのかかった王将戦二次予選決勝で渡辺明竜王に、朝日杯二次予選決勝で行方八段に、王位戦予選2回戦で広瀬章人五段に、王座戦二次予選で2回戦で阿久津主税七段に、NHK敗3回戦では山崎隆之七段に敗れた。
王将戦の渡辺竜王以外は、A級棋士でタイトル獲得3期の郷田九段から見れば格下。それぞれ、若手の実力者とはいえ、いずれも本戦トーナメントや昨年度は名を連ねた挑戦者リーグ入りを前にしての敗退は、ファンとしては歯がゆい限りである。
さらに2010年1月の竜王戦ランキング戦1回戦で森内俊之九段戦に遅刻不戦敗という不名誉な記録まで作ってしまった。
また今月(2010年2月)3日のA級順位戦8回戦でも粘ったものの丸山忠久九段に敗れ4勝4敗、勝てばプレーオフ進出の可能性も残っていた勝負だったが、これで2年連続の名人挑戦の可能性も消えた。
現在、当面のタイトル戦で挑戦の可能性を残しているのが郷田九段自らの2回タイトルホルダーとなったこともある棋聖戦である。これまで棋聖戦は1次予選、2次予選、2次予選抜き棋士と前期ベスト4、タイトルホルダー等シード棋士による16名による4組変則リーグによる最終予選の上、上位8名による挑戦者決定トーナメントという仕組みだった。
今期からは変則リーグの最終予選が廃止され、2次予選勝ち残り8名とシード棋士8名の16名による挑戦者決定トーナメントに変更された。
郷田九段は前期ベスト4(木村八段、稲場四段、久保棋王、谷川九段)、タイトルホルダー(深浦王位)、永世棋聖資格保持者(佐藤九段)に続く、8人目のシード棋士に選ばれた。現在A級の順位1位であること、過去2年連続棋聖戦挑戦者決定トーナメントに残ったこと、過去2期棋聖タイトルを獲得していることなどが評価されたのだろう。
挑戦者決定トーナメント1回戦(2010年2月17日)の相手は、2次予選4組を勝ち抜いたB級1組在籍の屋敷伸之九段。過去3期棋聖位を獲得したこともある実力者である。2人は1998年の第68期棋聖戦五番勝負で、屋敷棋聖に郷田六段(当時)が挑戦するという形で対戦し、郷田六段が3連勝でタイトルを奪取している。
今回、先手:屋敷九段、後手:郷田九段という手番だったが、郷田九段が勝ってベスト8に駒を進めた。
郷田九段にとって屋敷九段は相性のよい相手のようで2001年度以降で見ると、今回の対局も含め8回対戦があり、7勝1敗。特に、現在7連勝中である。
変幻自在の指し回しで「お化け屋敷」の異名も持つ屋敷九段だが、郷田一刀流の前には、妖術も通じないというところだろうか。
準々決勝の相手は、1回戦で谷川浩司九段を破った予選突破組の佐藤天彦五段。しっかり貫禄を見せて撃破して、準決勝、挑戦者決定戦と進み、再び羽生名人・棋聖と相まみえ、第72期棋聖戦五番勝負を再現し、羽生棋聖からタイトルを奪取してほしいものである。
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