うれしいニュース、『ツバメ号とアマゾン号』をはじめとするアーサー・ランサム全集全巻が岩波少年文庫<ランサム・サーガ>で復刊開始
いまからもう40年近く前、まだ小学校5年生から6年生の頃、夢中になって読んだ本があった。岩波書店から刊行されていたアーサー・ランサム全集12巻である。毎月の小遣いで1冊ずつ買いそろえた全集は、手垢で汚れているが、まだ私の実家の本棚に健在だ。
しかし、最近では、在庫切れとなっている巻も多く、新たに12巻全巻を買い揃えるのは難しい状況で、多くのランサムファンが『ゲド戦記』のように全巻少年文庫化を望んでいたと思う。
ジョン、スーザン、ティティ、ロジャというウォーカー家の兄弟がイギリスの湖水地方の湖で、夏休みにヨットに乗り、キャンプをし、数々の冒険を繰り広げる物語は、遊び盛りの小学生を夢中にさせた。また、12巻に及ぶ物語の中には、冬の湖を舞台にしたもの(第4巻『長い冬休み』)、誤って子どもたちだけで外海に迷い出てしまう話(第7巻『海へ出るつもりじゃなかった』)、ある入り江を探検し自分たちで地図を作り上げていく話(第8巻『ひみつの海』)、全巻を通じ、子どもの目から見て、なんとなく怪しげな大人もよく登場し、ちょっとしたミステリの趣きを備えており、読者を飽きさせない物語だった。
今日、このブログで本の紹介をしている過去の記事の中で、本の画像のリンク切れのメンテナンスをしていたところ、2007年10月に神田の古書まつりで『海へ出るつもりじゃなかった』を衝動買いした記事も画像のリンクが切れていたので、修復のためブクログで検索したら、岩波少年文庫<ランサム・サーガ>の『ツバメ号とアマゾン号(上)』『ツバメ号とアマゾン号(下)』が目についた。
<ランサム・サーガ>という呼び名は聞き慣れないし、表紙のデザインも以前、岩波文庫で出ていた『ツバメ号とアマゾン号』の上下巻セットとも違う。
アマゾンで確認すると発行日は2010/7/15とある。さらに岩波書店のホームページを探すとあった。6・7月の新刊の新刊としてツバメ号とアマゾン号』の上下巻が取り上げられていた。
ツバメ号とアマゾン号(上) (岩波少年文庫 ランサム・サーガ)
ツバメ号とアマゾン号(下) (岩波少年文庫 ランサム・サーガ)
同書の説明には次のように書かれている。
「〈ランサム・サーガ〉全巻改訳、刊行開始です。
はじめてランサムの作品が日本に紹介されたのは、1958年の少年文庫『ツバメ号とアマゾン号』でした。1968年には、箱入りのハードカバー版「ランサム全集」全12巻の刊行が始まりました。『ツバメ号とアマゾン号』は実に半世紀! シリーズとしても40年近く、たくさんの愛読者に支えられ、読み継がれてきたことになります。
長年「ソフトカバー版を」「廉価版を」というご要望が多かった、ランサムの冒険物語が全巻、少年文庫になります。いまの子どもたちに読みやすいようにと、この機会に、訳者の神宮輝夫氏ご自身が訳文を大幅に見直し、文字組みもゆったり、工夫を凝らしました。
さて、第1巻は『ツバメ号とアマゾン号』。ウォーカー家の4人きょうだいは、小さな帆船「ツバメ号」をあやつり、子どもたちだけで、無人島ですごします。湖の探検、アマゾン海賊(ナンシイ&ペギイ)との出会い、キャプテン・フリントとの決戦……
夏休みのうれしさ、子どもたちだけの楽しみが、ぎゅぎゅっとつまった、夢のような物語。
解説は、作家の上橋菜穂子さん。ランサム作品への愛が、あふれてます!」
(岩波書店ホームページより)
待ち望んでいた全集全巻の少年文庫化がとうとう実現することになった。
『獣の奏者』の作者上橋菜穂子、『一瞬の風になれ』の作者佐藤多佳子という最近の児童文学や青春小説の話題作の作者が、ともに1962年生まれで、アーサー・ランサムの愛読者だったことは、このブログでも書いたことがあると思う。2人のような新たな若者の文学の旗手たちがかつてアーサー・ランサムを読んで育ったということが、今回の復刊の後押しをしたことは間違いないだろう。
神宮輝夫が自ら改訳を手がけ、上橋菜穂子が解説を書く新『ツバメ号とアマゾン号』は、それだけで「買い」である。これから、復刊が始まる〈ランサム・サーガ〉。ウォーカー家の兄弟との再会が楽しみである。
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2007年10月31日
「神田古本まつり」でアーサー・ランサムの『海へ出るつもりじゃなかった』を衝動買い
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コメント
初めまして、この3月に退職したjollyhotと言います。アーサー・ランサムを検索していて立ち寄らせていただきました。
ランサムファンって本当に多いのだと実感しています。
度々寄らせてください。
投稿: jollyhot | 2014年4月10日 (木) 23時32分