「キャナルシティ博多」と「マリノアシティ福岡」に行って考えたこと、<アジアの中の福岡>と<デフレは人の感性を鈍磨させる>
昨日深夜、福岡への帰省から戻り東京の自宅に帰り着いた。4泊5日間の帰省だった。
3人の子どもを含めた家族5人で、まず妻の実家で1泊。それから私の実家に2泊。その間、私の父の23回忌、私の母が一人で暮らす私の実家の掃除、再度、妻の実家に戻り1泊した。
私の実家にも、妻の実家にもパソコンもなければテレビゲームもない。子どもたちにとっっては、どちらの家にいても退屈極まりない。子どもたち、特に二人の娘が反乱を起こさないよう、次女が行きたいと行っていたショッピングモールに行くことにした。
最初に「キャナルシティ博多」。1996年にオープンした複合商業施設だ。ホテル、映画館、ゲームセンターなども備えた大型のショッピングモール。行った日が、土曜日だったこともあってかなりの人出だった。数年前に一度、家族で行った覚えがあるが、その時よりは賑わっているような印象を受けた。
2時間ほど館内を歩いたが、中国人の団体旅行と思われる集団にも出会った。ツアーコンダクターらしき人が、大声で説明をしていた。
福岡は韓国・中国に近い。韓国の釜山(プサン)からは、博多港まで高速艇ジェットフォイルでわずか3時間である。中国との間も、北京、上海だけでなく大連、青島などの航空路が開かれており、特に福岡-上海便は本数が多い。
迎える側も日本の中でも韓国・中国に近い立地という点を十分意識しているように思う。
「キャナルシティ博多」の2日後に行ったのが、西区小戸のヨットハーバーに隣接するアウトレットモール「マリノアシティ福岡」。こちらは、2000年にオープン。その後、2004年、2007年の2回に渡ってアウトレット棟を増設している。こちらに行くのは初めて。
ここは、大観覧車が売り物のひとつだったが、採算が取れないようで、既にゴンドラは外されていて、大観覧車の営業は停止、近々解体されるということだった。
また、建設順に3つあるアウトレット棟の第1棟に入ると10店ほどの店の閉店のお知らせが掲示されていた。栄枯盛衰は世の定めとは言え、昨今の厳しい経済情勢を認識せざるを得なかった。
ここでも1時間半ほど、アウトレット棟のⅠ棟~Ⅲ棟、レストラン街、通常の大型ショッピング街などを見て回ったが、アウトレット棟の一番奥にあたるⅢ棟で改装工事や閉店の案内が目立ったような気がした。(最初のⅠ棟だけでも、1・2階で30店舗ほどの店があり、そこで満足した客は、奥のⅢ棟まではおそらく行かないだろう)
ここでは、ぶらりと入ったカジュアル衣料の店で、店員に声をかけられ、「どこから来た」、「どこに住んでいる」などあれこれ聞かれる。最初はうっとうしいと思ったが、ならばこちらから質問してやろうと思い、「中国からのお客さんが増えているのでは?」と水を向けると「ええ、増えてますね。でも、彼らは、時計や家電製品は買うが、衣料品はまず買わない。Made in Chinaを作るためにいかに安く働かされているかよくわかっているので、中国製とわかれば絶対買いません」という答えだった。
確かに、日本に来てMade in Chinaの服を買ってもむなしいだけだろうなと妙に納得してしまった。
アウトレットショップに並ぶ多くの衣料品のブランドショップのいくつかに出入りし、おしゃれなシャツやポロシャツを見ていると、経済学者の浜矩子が『ユニクロ型デフレと国家破産』(文春新書)の中で述べていた「デフレは人の感性を鈍磨させる」というフレーズを思い出した。
ざっと要約すると
「デフレの中では、コストを極限まで切り詰めるため、価格は安いが、画一的な商品しか作られない。衣料品でも、デザインも色味も、創造性に欠けるので、組み合わせに悩む必要もない。自分の感性や個性との関わりを考えることもない。そのような、創造性に乏しく、感受性を刺激しない物品に囲まれた生活を続けていると人の感性が蝕まれる。デフレは人をバカにする」
といったところである。
数多くの商品の中から組み合わせを考え、自分らしさを表現するためのこだわりの一品を選ぶ。そこに人の価値観が反映されるということだろう。
私はこの数年、ユニクロの服を愛用してきた。自分ではそれなりに選択して、組み合わせも考えているつもりだが、今年の夏、通勤電車で自分が着ているワイシャツと同じ柄のワイシャツを着た人が隣に立っていた時は、さすがに興ざめした。
アウトレットショップで見た、各ブランドの店ではそれぞれがターゲットとする年代を意識した服作りをしており、その中で、自分の好みの品を探すだけでも楽しい。そこでは、これを買ったらどう着こなそうか、どういう時に着ようかと考える。多くの場合、出費に比して活用できる機会がなさそうなので、買わないという判断に落ち着くが、そもそも、そういうことを考えることに意味があるということだろう。
改めて考えてみると、ユニクロで服を買う時は、そこまで吟味はしていない。デザインも必ずしも100%満足という品ばかりでもないが、「とりあえず必要だし、この安さならまあいいか」という判断で買っている。そこでは、自分の感性の半分も働いていないだろう。
やはり「デフレは人の感性を鈍磨させる」という問題認識は正しいと思う。
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