小惑星探査機はやぶさのカプセルにはイトカワ由来の微粒子が1500粒
今年(2010年)6月、7年の歳月を経て、数々の苦難を乗り越えた探査機はやぶさが小惑星イトカワから地球に帰還し、イトカワのサンプルを収めたかも知れないカプセルを地上に届け、自らは流れ星となって燃えつきてから、半年近い月日が過ぎた。
カプセルの中には、肉眼で確認できるようなサンプルはなかったものの、微粒子は存在するとのことで、それがはやぶさがイトカワに想定外の着陸をした際にカプセル内に採取されたものか、地球由来のものかの調査、分析が進められていた。
昨日(2010年11月16日)、とうとうその結果が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から発表された。「1500粒程度の微粒子が岩石質で、そのほぼ全てが地球外物質であり、小惑星イトカワ由来である」と判定されたとのこと(詳細は下記プレスリリース)。文部省ではやぶさのプロジェクトマネージャーであるJAXAの川口淳一郎教授らが記者発表をした。
プレスリリース
http://www.jaxa.jp/press/2010/11/20101116_hayabusa_j.html#at01
川口教授は、2003年の「はやぶさ」打ち上げ直後に、以下のような加点法による「はやぶさ採点簿」を公表しているが、結果的にすべてをクリアしたことになる。
電気推進エンジンの稼働開始(3台同時は世界初):50点
電気推進エンジンの1000時間稼働:100点
地球スウィングバイ(電気推進によるものは世界初):150点
自律航法に成功して「イトカワ」とのランデブー:200点
「イトカワ」の科学観測:250点
「イトカワ」にタッチダウンしてサンプルを採取:300点
カプセルが地球に帰還、大気圏に再突入して回収:400点
「イトカワ」のサンプル入手:500点
これのような採点は、うがった見方をすれば、一般に理解されにくく、誰も確たる評価軸を持ち得ない宇宙観測のプロジェクトについて、プロジェクトの実施主体自らが、100点のバーを達成可能なレベルに設定して公けにすることで、世の中に対して先に評価軸を示すという意味があったかもしれない。そのような、評価軸をもっていないと、いつ素人の事業仕分けで、血祭りに上げられるかも知れない時代である。
そこまで、考えていたとすれば、川口プロマネは先見の明は大したものであり、自分たちの仕事の成果を見事に世間に理解させたと言えるだろう。
そんな天の邪鬼な見方はさておき、カプセルの中にイトカワから持ち帰ったサンプルが存在していたというニュースは、一連の「はやぶさ」物語の最高の締めくくりだろう。幾多の絶望的な危機を人智を結集して乗り越え、不可能と思えたことを可能にしてしまったこのプロジェクトは、なかなか元気のでない、我々日本人にとって何よりの贈り物だ。
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