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2010年12月16日 (木)

第23期竜王戦七番勝負第6局、渡辺明竜王が二手目△8四歩で挑戦者の羽生善治名人を破り七連覇達成

2年前の2008年の第21期竜王戦七番勝負と同様、挑戦者に羽生善治名人を迎えた今期(2010年、第23期)の竜王戦も渡辺竜王が3勝2敗として、第6局を迎え、渡辺竜王が勝てば竜王位防衛(七連覇)、羽生名人が勝てば3勝3敗で第7局にタイトルに行方が持ち越されるという対戦になった。
渡辺竜王としては自らが1勝リードし、優位な立場にあるこの第6局で決めてしまいたいところ。一方、羽生名人には通算7期の竜王位獲得による「永世竜王」称号の獲得と、それによる現在ある7つのタイトルの永世称号を全て獲得するという「永世七冠」がかかる。なんとしても、このカド番の戦いに勝利し第7局に持ち込みたい。

将棋の内容は、先手羽生名人の▲7六歩に対し、後手渡辺竜王が△8四歩と応じた。前回の記事で紹介した後手番が不利とされ、指す棋士が減っているといわれる二手目△8四歩である。(プロ棋士たちの二手目△8四歩を巡る「新手」について-A級順位戦渡辺竜王vs郷田九段戦を終えて
そこから、渡辺竜王は完全な先後同型角換わり腰掛け銀には進めず、早めに△3三銀と上がり、従来の実績・研究では後手が不利とされる局面に進めた。さらに相手の6筋の歩が伸びる前に△6五歩と6筋の位を押さえ、また本格開戦前のつばぜり合いの中で△9二香、△9三香と9筋の香車をひとマスずつ動かすなど、工夫をみせた。
△6五歩の狙いは△6四にスペース作り、相手の出方次第で、△6四角と打つという狙いだったようだ。72手目に△6四角は打たれ、羽生玉の9筋への逃げ道である▲9七の位置をにらみを効かせた。また、△9三香と上がっていたことで、既に△9二に飛車が回っており、その後、△9五歩から▲同歩、△9六歩(打)、さらに△9五香と走って、飛車、角、香車で9筋突破に成功。羽生名人は、やむを得ず▲9八歩と受けざるを得ず、羽生玉の9筋への逃げ道は塞がれた。
一方、渡辺玉に近い端である1筋・2筋でも細かい応酬が続いたが、渡辺竜王はうまくしのぎ、逆に△1四に金が陣取って、自玉を守る大きな盾となった。
両者の玉の懐の広さ(渡辺)、狭さ(羽生)は一目瞭然で、また最後には、△6四から△9一に待避を余儀なくされていた渡辺竜王の角が、△5五角と盤面中央に躍り出て、▲8八にいる羽生玉を角筋にとらえるなど、序盤での渡辺竜王の工夫の布石が実り、羽生玉は受けなし、渡辺玉は詰まないとなり、羽生名人が投了。渡辺竜王の7連覇が決まった。

第23期竜王戦七番勝負第6局 渡辺明竜王vs羽生善治名人戦の棋譜

渡辺竜王のタイトル戦という大舞台で、それも最強の棋士羽生名人を相手に、果敢に二手目△8四歩に踏み込んでいった勇気が勝利を呼んだのではないかと思える一局だった。

タイトル戦での連覇で、7連覇以上の記録を調べてみると、
羽生現名人-王座戦19連覇(継続中)、棋王戦13連覇、王位戦9連覇
大山15世名人-名人戦13連覇、王位戦12連覇、王将戦9連覇、棋聖戦7連覇(2回)
中原16世名人-名人戦9連覇
など数えるほどである。
渡辺竜王も、なかなか負けない棋士の仲間入りをしたといってもいいのかも知れない。

どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語
どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語

梅田望夫著『どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?』(中央公論新社)の世代分類に従えば、、今回の対戦は「羽生世代」の本家羽生名人と「渡辺竜王を中心とした世代」本家渡辺竜王の世代の代表どうしの対戦だった。
渡辺竜王は、この7連覇の中で、「羽生世代」のうち、羽生名人に2回、佐藤康光九段に2回、森内俊之九段に2回勝ち、残る1回が(羽生世代の)「ちょっと下の世代」の木村一基八段。羽生世代の3強をそれぞれ2回ずつ倒したことになる。
7連覇ともなると、連覇を誰が止めるのかが注目されるが、竜王戦での渡辺竜王の「羽生世代」に対する強さを見ると、連覇を阻止するのは、もはや、40代を迎える「羽生世代」や「ちょっと下の世代」ではなく、広瀬章人新王位や王将戦の挑戦者となった豊島将之六段などの「もっと若い世代」なのかも知れないという気がした。

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