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2010年12月11日 (土)

将棋第69期A級順位戦6回戦第3局渡辺明竜王vs郷田真隆九段戦、郷田九段が勝って3勝3敗の五分に戻す

今期(第69期)のA級順位戦は5回戦を終ったところで、
4勝1敗:森内俊之九段(3位)、谷川浩司九段(6位)、渡辺明竜王(9位)
3勝2敗:なし
2勝3敗:三浦弘行八段(1位)、高橋道雄九段(2位)、丸山忠久九段(4位)、木村一基八段(5位)、郷田真隆九段(7位)、久保利明二冠(棋王・王将)(10位)
1勝4敗-藤井猛九段(8位)
という星勘定になっていた。()内は今期のA級順位。

名人挑戦レースは4勝1敗の3人に絞られたようにみえるが、2勝3敗の6名の多くが、上位3人のうち2人と未対局であり、その結果次第では、まだまだ、流動的である。

12月9日は森内九段vs高橋九段戦と木村一基八段vs藤井猛九段戦が行われ、森内-高橋戦は千日手指し直しの上、森内九段の勝利して5勝1敗。木村-藤井で戦は189手の激戦を藤井九段が制して貴重な2勝目を上げたため、高橋、木村、藤井の3名が2勝4敗で並んだ。

12月10日は渡辺明竜王vs郷田真隆九段戦。渡辺竜王は、勝って5勝1敗とし森内九段と並び挑戦権レースのトップグループにとどまりたいし、今期のA級順位7位と順位のよくない郷田九段としては、2勝4敗の最下位グループには入りたくない。
ともに居飛車党で、近年不利と言われる後手での二手目△8四歩にこだわりを持つ2人の対戦である。名人戦棋譜速報の解説によれば、2人の対戦成績は渡辺竜王から見て6勝5敗(○○○●●●○●○○●)とのこと。直近は7月31日のJT将棋日本シリーズの2回戦で相掛かりの後手番で郷田九段が勝っている。

今回は先手が郷田九段。先手▲7六歩に対し、後手渡辺竜王は果敢に△8四歩。両者が後手番での課題と考える先後同型角換わり腰掛け銀の展開に進んだ。37手目で同型腰掛け銀が完成。そこから郷田九段が長考の上、攻撃の1手を指したところで、昼食休憩に入った。昼食休憩後、数手のやりとりがあった後、48手目に後手渡辺竜王が△8一飛とこれまで指されたことのない新手を披露。しかし、その後の郷田九段の対応が的確だったようだ。

棋譜中継を見ているとその後、夕食休憩後に、渡辺竜王が攻めに転じ飛車、角を捌き、郷田九段の陣中の飛車を抑えにかかっており、渡辺竜王の方が快調に見えた。
棋譜中継のコメントでも、控え室で検討する棋士達の評価も、そのあたりで当初の郷田優位からいったん渡辺優位に変わっいた。しかし、終局後のコメントでは渡辺竜王は夕食休憩後は終始自信が持てなかったそうだ。

結局、渡辺竜王の攻めを郷田九段が巧みにかわし、73手目に▲2三歩と反撃ののろしを上げた。その直後、渡辺竜王の疑問手と思われる手も出て、郷田九段が一気に渡辺玉に攻めかかった。そこからは、郷田九段の攻めがほぼ途切れることなく続き、控え室の棋士の評価も郷田九段勝勢に転じた。

しかし、その後、追う郷田九段に対し、なんとか攻めをかわして郷田陣へ入玉しようとする渡辺竜王とのやりとりが延々50手以上続いた。渡辺竜王としても、森内九段が既に勝って5勝1敗としているだけに、簡単に投了する訳にはいかなかったのだろう。そんな中でも、郷田九段は渡辺玉を守っている駒を1枚1枚と剥がしていき、最後は単騎で逃げる渡辺玉を上下から挟撃する体制を築き、145手で渡辺竜王の投了となった。双方とも残り時間は1分。終了時刻は11日午前0時56分。

勝った郷田九段はトップを走る渡辺竜王に土をつけ3勝3敗の五分に戻した。暫定順位も4位に浮上、残る3戦の相手は、久保二冠、森内九段、谷川九段の順であり、全勝できれば、上位者3名の成績次第では、6勝3敗でプレーオフという可能性もあるだろう。
一方、渡辺竜王は4勝2敗となり、挑戦レースからは一歩後退となったが、依然として有力候補であることに変わりはない。

現時点のA級の暫定順位は以下の通り。
5勝1敗:森内九段
4勝1敗:谷川九段
4勝2敗:渡辺竜王
3勝3敗:郷田九段
2勝3敗:三浦八段、丸山九段、久保二冠
2勝4敗:高橋九段、木村八段、藤井九段

残る6回戦は12月15日に谷川vs丸山戦、16日に三浦vs久保戦が組まれている。谷川vs丸山戦は谷川九段が勝ってトップを守るのか、丸山九段が勝って3勝3敗グループ入りするのか。三浦vs久保戦は勝った方が3勝3敗、負けた方が2勝4敗となる。
どちらも、目が離せない戦いだ。

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