計画停電の1週間を終えて思うこと、「精神のバランスをとってしたたかに生きる」
2011年3月11日(金)の「東北地方太平洋沖地震」から2度目の週末を迎えた。地震当日、そして最初の土日、東京電力により計画停電初日の14日(月)と最初の数日間は、目まぐるしく変化する状況に自分自身が対応するのがやっとだった。
その後、日を追って明らかになる岩手県、宮城県、福島県などの被災地での事態の深刻さ、日に日に悪化しているようにも見えた東京電力の福島第一原子力発電所の事故の状況、直接の被災地だけでなく東京においてもガソリンが払底し、食料品や日用品の一部が店頭から姿を消すを見るにつけ、今回の地震の被害が、尋常なものではなく想像を絶するものだったことが、実感として身に迫ってきた。
首都圏の計画停電は、徐々に安定稼働に向かっているように見える。最初は、とにかく、需給をバランスさせることが最優先されていた感じだったが、何日か続けるうちに、明らかになった問題を少しづつ修正しているというところだ。やはり、日本の首都として政府の機能、各企業の本社機能を維持していくためには、そこで働く人を確保しなくてはならない。官僚や社員の通勤の足を確保するため、鉄道への電力供給については、鉄道を所管する国土交通省から東京電力を所管する経済産業省の資源エネルギー庁への申し入れもあって、ある程度の優先安定供給が確保されたようだ。
私が利用する西武鉄道の新宿線や池袋線も停電当初は、毎日のように運行区間が変更された。停電2日めの15日(火)の運行や新宿線が西武新宿-鷺ノ宮、池袋線が池袋-練馬高野台と発表されたため、どうルートを考えても、まともな出勤はできそうになく、休暇を取った。
16日(水)以降は、平日は全列車各駅停車ではあるものの、新宿線が西武新宿-新所沢間、池袋線が池袋-小手指間の運行は確保し、可能な時間帯は、新宿線であれば終点の本川越、池袋線であれば飯能まで運行区間を伸ばすという運用に収斂しつつある。
なんとか、不十分ながらも、東京で働き生活する環境は整いつつある。(そんな中、東京を本拠地とするメガバンクのシステムトラブルが発生したのは想定外の事態だったが…。)
まだ、漠然とした不安もある。依然として、余震はおさまらず、東京も震度6、7クラスの揺れに襲われるのではないかという不安は払拭できない。
さらに、福島原発では、現在も自衛隊員や消防隊員、東京電力と協力企業の社員たちの命がけの作業が続いている。事態が少しづつ改善に方向に向かっていると信じたいが、予期せぬトラブルや惨事が起きてしまうのではないかというつい考えてしまう。
2年半ほど前に、経済の世界では、米国でのサブプライム・ローン問題の事態悪化に端を発した信用不安から米国の大手投資銀行のリーマン・ブラザーズが破綻するという事件が起きた。世に言う「リーマン・ショック」だ。
欧米の金融機関の多くが経営危機に見舞われ、日本でも株価が急落した。そのリーマン・ショック直後の2008年10月に、将棋界では渡辺竜王に羽生名人が挑戦する第21期竜王戦七番勝負の第1局がパリで行われた。その第1局を観戦した『ウェブ進化論』の著者梅田望夫氏は次のように書いた。
個人の手に負えないほど大きなことが周囲で起きたときに、私たち一人ひとりにできることはそれほど多くないということである。もちろんサバイバルのためにベストを尽くすのは大切だ。でも、そんなことばかりを365日24時間考え続けながら生きることは、私たちには到底できないのである。
テロが起きても、戦争が始まっても、世界経済が音を立てて崩れようとも、私たちは、毎日の生活の潤いや楽しみを求めて、音楽を聴いたり、小説を読んだり、野球を観たりしながら、精神のバランスをとって、したたかに生きていかなければならないのだ。文化は、その時代が厳しくなればなるほど、人々の日常に潤いをもたらす貴重な役割を果たすものなのである。
(第21期竜王戦第1局竜王戦【梅田望夫観戦記】(1)「正しいことが正しく行われている街で」より)
ここでは、テロ、戦争、世界経済の崩壊が例にあげられているが、天変地異・大災害などもそれに含まれると考えていいだろう。
「個人の手に負えないほど大きなことが起きた時は、サバイバルのためにベストは尽くしながらも、個人として精神のバランスをとって、したたかに生きていく」ことを改めて肝に銘じて、また明日から始まる毎日に向き合っていこう。
関連記事
2008年10月25日(土):底が見えない世界同時金融危機を生き抜いて行く方法、第21期竜王戦の【梅田望夫観戦記】から
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