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2011年3月12日 (土)

2011年将棋界の一番長い日(A級順位戦最終戦)と順位戦B級1組最終戦が終り、来期(第70期)のA級棋士決まる

2011年3月2日に第69期A級順位戦の最終9回戦、昨日(3月11日)のB級1組の最終戦(13回戦)が終わり、来期の名人とA級棋士10名の計11名の顔ぶれが固まった。

1月14日のB級1組11回戦で、前期A級から陥落した佐藤康光九段が山崎隆之七段に勝って9勝2敗とし昇級が確定、2月4日の12回戦で敗れ9勝3敗となったものの、B級1組1位が確定、来期の9位でのA級復帰を決めている。

まず、A級の最終9回戦。8回戦を終えて、名人挑戦者も降級2名も決まっていない混戦となっていて、ここまでの暫定成績は次の通り。

1位:森内九段6勝2敗(3)
2位:渡辺竜王6勝2敗(9)
3位:高橋九段4勝4敗(2)
4位:谷川九段4勝4敗(6)
5位:郷田九段4勝4敗(7)
6位:久保棋王・王将4勝4敗(10)
7位:三浦八段3勝5敗(1)
8位:丸山九段3勝5敗(4)
9位:木村八段3勝5敗(5)
10位:藤井九段3勝5敗(8)

名人挑戦は、上位の2人に絞られている。一方、降級については、暫定5位の郷田九段までの残留が決まり、久保二冠以下の5人は降級の可能性がある。

対戦カードは
▲森内 俊之九段(6勝2敗)-△久保 利明二冠(4勝4敗)
△渡辺 明竜王(6勝2敗)-▲丸山 忠久九段(3勝5敗)
▲谷川 浩司九段(4勝4敗)-△郷田 真隆九段(4勝4敗)
▲高橋 道雄九段(4勝4敗)-△藤井 猛九段(3勝5敗)
△三浦 弘行八段(3勝5敗)-▲木村 一基八段(3勝5敗)

5局の対局のうち、4局が挑戦・降級に絡む戦いである。

名人挑戦については、6勝2敗の森内九段、渡辺竜王が両方勝つか、両方負けた場合は2人のプレーオフ。一方が勝ち、一方が負ければ勝った方が挑戦である。

降級については、複雑で、暫定順位が低い方から順に書くと、
藤井九段:負ければ降級。勝った場合、丸山九段ないし久保二冠が負けた場合のみ残留。
木村八段:勝てば残留。負ければ降級。
丸山九段:勝てば残留。負けた場合に、藤井九段・木村八段のどちらかが勝つと降級。
三浦八段:勝てば残留。負けた場合に、藤井九段・丸山九段がともに勝つと降級。
久保二冠:勝てば残留。負けた場合に、藤井九段・丸山九段のどちらかが勝つと降級。

最初に決着がついたのは、三浦vs木村戦。横歩取りとなった戦いは、角交換から盤の中央で飛車・角が飛び交う戦いとなったが、飛車を木村陣に成り込むことに成功した三浦八段が主導権を握り押し切った。木村八段としては、いいところなく攻められての投了となり、不本意な敗戦での降級だったろう。
A級1年め第66期には5連勝と華々しいデビューを飾った木村八段。一昨年(2009年)に棋聖戦、王位戦で相次いで挑戦者となり、羽生棋聖、深浦王位を相手にタイトル獲得寸前までいきながら、果たせなかった。それ以降、不調に陥っているように思われる。9回戦の直前に行われた第4回朝日杯オープンでは見事優勝したが、A級残留は果たせず、4期守ったA級の座を明け渡すこととなった。
一方の三浦八段は前期の名人挑戦者。第60期からA級に加わったが、かつては、最終戦まで降級争いの中で、最終戦で辛くも残留ということが何回かあった。第66期に7勝2敗と大きく勝ち越し、第68期(前期)にはこれも7勝2敗で名人挑戦。今期、この最終戦に勝って4勝5敗とし、名人挑戦の翌期に降級という不名誉を自らの勝利で払拭した。

次の決着したのは、谷川vs郷田戦。どちらも4勝4敗8回戦までの暫定順位は4位と5位で残留が決まっており。このカードだけが、挑戦にも降級にも関係ない。しかし、今期の順位が谷川6位、郷田7位と低位なため、自分が負けで自分より上位で3勝5敗の三浦八段、丸山九段、下位で4勝4敗の久保二冠が勝つと、来期の順位が今期より悪くなる可能性がある。なんとか勝って来期の4位以上を確保したいところだ。
先手の谷川九段はゴキゲン中飛車を採用。対する郷田九段は、中央に金銀を厚く構え谷川九段の飛車の動きを押さえ込みにかかる。結果的にこの押さえ込みが成功し、谷川陣の守りがどんどんと崩される一方で、郷田玉にはまだ余裕が。98手目、郷田九段の谷川玉の玉頭を守る香車を狙う桂打ちを見て、谷川九段が投了した。郷田九段優勢とは言われていたが、終盤戦の戦いにはまだ一波乱、二波乱あると思っていただけに、やや驚きの投了だった。郷田ファンの私としては、これから郷田九段の寄せが見られると思っていただけに、やや拍子抜けだった。郷田九段は5勝4敗と勝ち越し。高橋九段の成績次第だが、来期の4位以上3位以下が確定した。
谷川九段の早めの投了は、今年の一番長い日の主役は自分ではないという思いもあったのかも知れない。

3局めの決着は、高橋vs藤井戦。後手、藤井九段の四間飛車に対し、高橋九段は居飛車から自玉を金銀4枚でがっちり固める。1筋、2筋を突破し、藤井陣に攻め入った高橋九段。一方、藤井九段も角2枚で高橋陣の1筋、2筋に潜り込んだが、2八に打たれた1枚の歩に角と馬の動きを封じられた。その後、高橋九段の美濃囲い崩しで、自玉を挟撃された。金銀4枚の高橋九段の堅陣は手つかずのまま、藤井九段無念の投了となった。藤井九段は第60期にA級に昇級して以降10期連続で守っていたA級から降級。
高橋九段は5勝4敗とし、来期もA級3位と高順位を確保。前期、3度目のA級6勝3敗と好成績で終えたのに続き、50歳を迎えた今期も5勝4敗と勝ち越し、来期もA級3位と高順位を確保した。これで、郷田九段の来期4位も確定。
降級者も木村八段、藤井九段で決まったため、三浦八段の残留が決まり、勝負のついていない、丸山九段、久保二冠の残留も確定した。

残ったカードは名人挑戦のかかる2局。

4番めに終局となったのは、渡辺vs丸山戦。丸山九段は終局前に残留が決まっているが、知る由もない。過去の対戦成績は4勝4敗と互角。
先手丸山九段得意の角換わりの戦型へ。最終的な駒組みは先後同型に近いが、先手▲6六歩がついていない代わりに、飛車が▲2八でなく▲4八に回っている。丸山九段が駒得から攻めかける。渡辺竜王も反撃を試みるが及ばず、投了。
終局の時点で他の対局者の結果で、すでに残留は確定していた丸山九段だったが、自らの勝利で4勝5敗とし、残留を確実にした。
敗れた渡辺竜王の名人単独挑戦はなくなり、森内九段の結果待ちとなった。

最後まで残ったのは、森内vs久保戦。名人挑戦がかかる森内九段と勝って残留を確かなものにしたい久保棋王・王将。名人戦棋譜速報の解説では、対戦成績は森内12勝、久保15勝。直近久保二冠の6連勝とのこと。この2年ほど、棋王位・王将位の奪取、A級復帰という久保二冠の好調ぶりが、対森内戦の対戦成績にも表われている。
戦型は後手の久保二冠がゴキゲン中飛車を選択、居飛車の森内九段は▲3七銀から▲4六銀の早繰り銀で対抗する形となり、最近のプロ棋士の対戦でよく見かけるパターンの一つになった。早繰り銀が▲3四まで進出し、好調に攻める。飛車、角が何度も交換される中、森内九段が少しづつ優位を広げる。しかし、誰もが森内勝勢、久保投了もやむなしとの局面から久保二冠が驚異的な粘りをみせた。
久保二冠にとっては、藤井九段が勝っていれば、投了した時点A級降級が決まる。わずかでも望みがあれば、粘るしかない。
しかし、森内九段も、冷静に対応し、175手で久保二冠投了。終局の時刻は3日の午前1時40分と記録されている。
森内九段は7勝2敗とし、名人挑戦が決まった。名人戦棋譜速報の伝えるところによれば、久保二冠は自らの残留・降級がわからぬまま感想戦にはいり、感想戦後に残留を伝えられたらしい。

最終的な第69期A級順位戦の成績は次の通りとなった。
1位:森内俊之九段:7勝2敗→名人挑戦
2位:渡辺明竜王:6勝3敗
3位:高橋道雄九段:5勝4敗(2位)
4位:郷田真隆九段:5勝4敗(7位)
5位:三浦弘行八段:4勝5敗(1位)
6位:丸山忠久九段:4勝5敗(4位)
7位:谷川浩司九段:4勝5敗(6位)
8位:久保俊之棋王・王将:4勝5敗(10位)
9位:木村一基八段:3勝6敗(5位)→降級(来期B級1組1位)
10位:藤井猛九段:3勝6敗(8位)→降級(来期B級1組2位)
<注記>()内は今期当初順位

来期のA級の順位は2位から8位は上記の今期の成績が反映される。
1位は、これから行われる第69期名人戦七番勝負の敗者で、森内九段か羽生名人。
9位は今期のB級1組1位を決めている佐藤康光九段が木村八段に入れ替わる形で昇級。
残る10位にはB級1組最終13回戦で直接対決となった、松尾歩七段vs屋敷伸之九段の勝者が座ることになる。

今期のB級1組は、4回戦を終った時点では、山崎七段が4連勝、井上八段(現九段)が3連勝(抜け番含む)で飛び出し、佐藤九段、松尾七段が3勝1敗で追いかける展開だった。屋敷九段が3連敗(抜け番含む)で昇級レースよりどころか、残留に必死にならざるを得ない状況だった。
その後、山崎七段、井上八段は失速。佐藤九段は白星を積み重ねてA級早々にA級復帰を決めた。3連敗の屋敷はその後7連勝と白星を積み上げ、ラス前の12回戦で今期B級1組7位の屋敷が勝ち、6勝4敗で追う松尾(順位5位)、山崎(順位6位)がともに敗れれば、最終戦を前に屋敷の昇級が決まるところまできていた。しかし、昇級のかかった井上八段戦に敗れ、山崎も敗れたものの、松尾は勝って、松尾七段、屋敷九段が7勝4敗で並ぶことになった。他に、4敗はおらず、松尾vs屋敷戦の勝者が8勝4敗で2位となりA級の椅子を手にするというわかりやすい構図になった。

先手屋敷、後手松尾の戦いは横歩取りとなった。中盤の攻防の中で、松尾七段に読み抜けがあったようで、桂損が確定し、苦しい展開となった。途中、地震での中断というハプニングにも見舞われる。松尾七段は、桂損の打開策を見いだせないまま、屋敷九段が着々と差を広げ、屋敷九段が放った玉頭を守る金をにらむ飛車への援軍として放った金取りの桂打ちを見て松尾七段の投了となった。松尾七段は、自らの読み抜けで無駄死をさせた桂馬を打ちたれての詰めろを見て、投げ場と思ったのかもしれない。屋敷九段のA級昇級が決まった。

以前、B級2組からB級1組に屋敷九段が昇級した際、記事(2008年3月8日:将棋第66期順位戦B級2組終了、屋敷伸之九段敗れるもB級1組昇級)を書いたことがある。
S60年に奨励会入り、三段リーグを1期で抜け、羽生世代のうち、郷田(S57年奨励会入り)、丸山九段(S59奨励会入り)に先んじた屋敷九段のその後の苦闘の足取りは3年前の記事を読んでいただければと思うが、その早熟の苦労人がとうとうA級に這い上がってきた。18歳でのタイトル(棋聖位)獲得は依然として破られていない記録であるし、タイトル獲得通算3期での九段位昇段も堂々たるものであり、A級棋士として何の遜色もない。

来期(70期)のA級は、今期のA級で唯一タイトル獲得経験のなかった木村八段が降級し、佐藤九段、屋敷九段の2人が昇級したことで、10人全員がタイトルホルダーかタイトル獲得経験者ということになった。
重厚な布陣の中で、名人戦に敗れて1位になるのは、羽生現名人か森内九段か、またその10人の中で、次の挑戦者の名乗りをあげるのは誰になるのであろうか。

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