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2011年5月 8日 (日)

第69期名人戦七番勝負第3局、羽生善治名人がまさかの3連敗で、森内俊之九段が2度目の名人復帰に王手

将棋の第69期名人戦七番勝負第3局は、2011年5月6日・7日の両日、宮崎市で行われた。
2連勝で波に乗る挑戦者の森内九段、2連敗と厳しいスタートの羽生名人。先手番の時に、きちんと勝つことがポイントと言われる2人の対戦の中で、第3局は森内九段の先手。
2連勝の森内九段としては、自らの先手番のこの第3局を確実に勝ちきることで、初めて第2局の後手番での勝ち星が生きてくる。逆に羽生名人にとっては、後手番の本局でなんとか勝利を手にすることができれば、第4局では先手番が回ってくるため、2勝2敗の五分に持ち込める可能性は十分にある。

▲7六歩と角道をあけた森内九段に対し、△3四歩、▲2六歩と進み、次の4手目羽生名人は△5四歩と5筋の歩を突き「ゴキゲン中飛車」戦法を選択した。谷川九段が「ゴキゲン中飛車」を指すところは何回か目にしたことがあるが、羽生名人が指すのはあまり見たことがない。
羽生名人の成績を記録しているホームページ「玲瓏」の戦型別対局成績で見ても、羽生名人が「振り飛車」を採用しているのは、本局も含めた1572局の中で177局(11. 26 %)。昨年度(2010年度)では、57局のうち「振り飛車」わずかに1局となっている。 
名人戦棋譜速報の解説コメントによれば、森内九段も「ゴキゲン中飛車」は予想していなかったようだ。

森内九段の対抗手は、2010年の升田幸三賞にも輝いた「ゴキゲン中飛車」への対抗手「超速▲3七銀戦法」。玉の守りはそこそこにしておいて、左の銀を▲4八銀、▲3七銀、▲4六銀と早めに前線に繰り出して、攻守両面に備えようとする手だ。
今回も23手目の駒組みの段階までは、前期の第69期A級順位戦2回戦の郷田真隆九段vs藤井猛九段戦(先手郷田九段の勝ち)と同じ展開で進んだという。24手目に羽生名人が△4四歩と従来にない新手を指して、郷田・藤井戦とは違う展開になったが、「ゴキゲン中飛車vs  超速▲3七銀戦法」が、トップのプロ棋士の間でも、検討課題が多いのだろうということをうかがわせる。

その後、森内九段の▲4六銀は、▲3五銀(29手目)、▲3四銀(39手目)と△3三にいる角の目前まで進撃し、△同銀、▲同飛と進み、羽生陣の守備の銀と交換されて役目を終えた。
本局の▲3四銀の展開は、△3四歩(38手目)と打って羽生名人が銀交換を催促したことによるが、素人目から見ると、▲3七銀が相手の銀と交換される展開になれば、この銀は攻め駒として十分働いたことになり、居飛車側としては不満のない展開といえるのではないだろうか。
一方で、この時点で羽生名人の飛車は△5二に振られたあとは、まだ動いておらず、この時点ですでに形勢は森内九段が若干優位に立っているのではないかと思う。

その後も徐々に差が開いていったんではないかと思う。羽生名人は玉を美濃囲いで守っていたが、端歩(△9四歩)を突いておらず、玉の懐が狭い。森内九段は龍を作り羽生玉を横から攻める。終盤での羽生マジックが出ることもなく、森内九段が押し切って3勝目をあげ、2度目の名人復帰まであと1勝とした。

羽生vs森内戦は2010年10月23日の王将戦の挑戦者決定リーグで記念すべき100局めを迎え、それを記念して『羽生vs森内百番指し』が刊行されたことは第1局の記事でも書いた。
しかし、森内九段が羽生名人に名人位を奪われた3年前の2008年6月16日・17日の第66期名人戦七番勝負第6局が97局目。その後、2008年度の第58回NHK杯の決勝を経て、99局目が2009年8月7日の第22期の竜王戦決勝トーナメント準決勝。1年2ヵ月以上間が空いている。それ以前で、それほど2人の対戦間隔が空いたのは1998年11月の第57期のA級順位戦での対戦から2000年1月の翌第58期A級順位戦まで空いて以来の11年ぶりのことである。
『羽生vs森内百番指し』の中で、羽生名人はインタビューの中で「通算100局はもう少し早くくると思っていた・・・」と語り、おなじく森内九段は「まえがき」の中で、「ここ数年は対局数が減っており、最後の数局に随分と時間がかかってしまった。」と語っている。

羽生VS森内百番指し
羽生VS森内百番指し

私の推測の域を出る話はないが、森内九段は 『羽生vs森内百番指し』をまとめる中で、改めて羽生名人とのこれまでの100局の棋譜を見直し、自分の将棋について見直し、何か思うところがあったのではないだろうか。

今回の名人戦七番勝負での好調は、3年前の名人位失冠以来雌伏していた森内九段が 『羽生vs森内百番指し』をきっかけに何かをつかんだからなのではないか。同書の森内九段のインタビューは、「私もこの“百番指し”を契機として、少しでも努力を積み重ねていくことができればと思います」というコメントで締めくくられている。

3連勝で名人復帰に王手をかけた森内九段。できれば、羽生名人が本領発揮をする前に、4連勝、ないし4勝1敗で勝負を決めてしまいたいというのが本音だろう。さて、5月17日・18日に弘前市で行われる第4局では、どういう結果が出るのだろうか。

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