有川浩作品を続けて読んだ(2)、『県庁おもてなし課』、『三匹のおっさん』、『フリーター、家を買う。』
有川浩作品の世界にはまってしまった私は、文庫化されていない作品は図書館で借りようかと、一度、地元の図書館に行って書架をのぞいてみるが、「あ」行の棚にはそれらしい本は一冊もない。
備え付けの検索システムで作者「有川浩」で検索してみると、蔵書としての在庫は各作品5~8冊程度はあるのだが、もののみごとに、すべて貸出中となっていた。やはり、人気作家なのだと、おっくればせながら改めて認識した。
図書館が無理なら、自分で買うしかないと、最新刊で話題の『県庁おもてなし課』を買い、続けて『もう一つシアター!』にゲストとして登場する清田祐希のそもそもの登場作である『三匹のおっさん』、テレビドラマにもなった『フリーター、家を買う。』を順次読んだ。
『県庁おもてなし課』は、著者が出身地である高知県の観光特使に選ばれた経験をもとに書かれた作品。地元の観光振興のために作られた「おもてなし課」の職員の奮闘ぶりを描く。最初は、お役所仕事で格好悪いことこの上ない主人公の若き県庁マン掛水史貴が、仕事の中で、多くの人とかかわる中で、成長していく様子はほほえましい。
作品自体が、高知県の観光ガイドにもなっていて、一度、高知を訪ねてみたいと思わせる作品だ。著者の故郷への愛着を感じる。
『三匹のおっさん』は、還暦を迎えたキヨこと清田清一と子どもの頃からの遊び仲間であるシゲ(立花重雄)、ノリ(有村則夫)の三人(三匹)が自分たちの町で起きる数々の事件の解決に立ち上がるという話。そこに、キヨの孫である清田祐希と、祐希とは学校は違うが同い年になるノリの年の離れた娘有村早苗が絡んでくる。5人の周りでの巻き起こる様々な騒動を、三匹がいかに解決したかを、コミカルに語る。しかし、テーマとして取り上げられた騒動は、会社での不正、昔の同級生を語る詐欺、催眠商法など笑えない話題をさりげなく取り込んでおり、現代社会への風刺ともなっている。
うまく配役をすれば、テレビドラマにもなりそうな6話構成となっている。
『フリーター、家を買う。』は 、フジテレビで昨年(2010年)10月~12月にジャニーズの人気グループ嵐のメンバー二宮和也主演のドラマの原作である。ドラマは10回の放送の平均視聴率17.1%、最終回の視聴率は19.2%を記録した。
3ヵ月で就職先を退社してフリーターとなった武誠治が、母のうつ病をきっかけに再び働き始め、立ち直っていく姿を描くという基本的な枠組みは同じだが、ドラマの方が、話を膨らませてあり、原作にはない設定やエピソード含まれている。
小説自体は、他の有川作品とは異質の雰囲気を醸し出している気がする。あとがきによれば、フリーター生活を送る主人公は、作者有川浩その人と重なる部分も多いようだ。それゆえか、他作品では登場人物たちと適度な距離をおいて書かれているのだが、本作では、主人公と作者の距離感がすごく近いように感じた。
どの作品も、小説として読者を楽しませるという点では、高いレベルにあると思う。手元には、まだ読んでいない『阪急電車』と『レインツリーの国』があるし、今週中には図書館戦争シリーズの最終巻『図書館革命』が文庫化される。まだまだ、有川作品にはまる日々が続きそうだ。
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