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2011年10月 9日 (日)

PHP新書『日本企業にいま大切なこと』(野中郁次郎・遠藤功著)で語られた「知の創造のために必要な相互主観性」に納得

先週の後半は、北海道への1泊2日の出張。帰りの便は、19時30分。仕事が予定より早く終ったので、早い便への予約変更ができるかもしれないと、すぐ千歳空港に向かったが、3連休前の金曜日の夜ということで、東京便を含め、道外へ向かう便はほとんどが満席。結局、予約便の時間まで千歳空港で時間をつぶすことになった。
では、本でも読むかと書店の棚を見て回っている時に目についたのがPHP新書の『日本企業にいま大切なこと』。東日本大震災後、日本の将来を憂いながらも、日本再生を唱えるビジネス本も多く出されているが、ほとんど読んでいない。今回、これを読んでみようと思ったのは、著者が野中郁次郎だったから。
太平洋戦争期の日本軍の組織決定の不合理を鋭く描いた共著『失敗の本質』を始め、端に理論だけなく、現場での実証を重視するアプローチにはビジネスマンのファンも多いと思う。特に、日本企業の暗黙知を重視する姿勢は、米国流の資本効率のみを重視する考え方とは一線を画す。

戸部 良一,寺本 義也,鎌田 伸一,杉之尾 孝生,村井 友秀,野中 郁次郎
中央公論社
発売日:1991-08

この本のベースは、2011年3月10日に発売されたPHP研究所の雑誌『Voice』2011年4月号での「日本企業の「総合力」が輝く時代」というタイトルでの 著者2人の対談のようだ。発売直後、東日本大震災が起きたことから、その後の政治・経済の動きも踏まえて、構成の見直し、加筆・修正が施され、2011年8月にPHP新書のラインアップに加わっている。
バブル経済崩壊後の「失われた20年」で日本企業が精彩を欠く中、その間、デフェクトスタンダードとしてもてはやされたきた米国流の資本効率重視の市場主義的アプローチも、リーマンショックで行き詰まった。日本企業、日本の組織が持っていたいつの時代にも通じる良さを思い起こし、見直そうという思いが、この本全体の底流をなしている。その思いに共感するサラリーマンが多かったのか、発売から1ヵ月余の2011年10月の月初の時点で、既に第4刷となっている。

野中郁次郎,遠藤功
PHP研究所
発売日:2011-08-12

私がこの本の中で、一番、参考になったのは、「知的創造には他者と共鳴しあう「場」が必要」との小見出しで野中郁次郎氏が語る「相互主観性」という言葉である。少し長くなるが、私が重要と思った部分を抜き出して紹介しておく。

「イノベーションには、よい「場」が必要です。(中略)
「知」とは、人が関係性のなかでつくる資源にほかなりません。同じ組織内の人間だけでなく、顧客や供給業者、競争業者、大学、政府といったプレーヤーたちとのやりとりのなかで、お互い異なる主観を共有し、それを客観化することで「綜合」していく社会的なプロセスによって創られます。ここでいう「綜合」とは、複数の事柄を一つにまとめるだけでなく、より高い次元で対立や矛盾を解決し、新天地に進むという意味合いです。
「場」はそうした社会的プロセスの基礎といえるでしょう。場に参加することによって、人は他者との関係性のなかで、個人の主観の限界を超越し、自分と異なる他者の視点や価値を理解し、共有する。そこで構築されるのが、「相互主観性」です。
共通の目的と異なる視点をもつ他者との対話によって相互主観性が生じなければ、知の創造は起きません。そして、そのような関係を築くには、相手の身体感覚を自分のものとして感じることで他者に共鳴できるような「心身一如(しんしんいちじょ)」の場が必要なのです。
(中略)全人的に向き合い、受け入れ合い、共感し合う。ほんとうに豊かな暗黙知、共振、共感、共鳴---そのようなところから、相互主観性は生み出される。それが行動の原動力になるのです。」
(『日本企業にいま大切なこと』141~142ページ)

今回、私がいたくこの2ページほどの文章に心を動かされたのは、私自身が現在の職場で新たな知的創造を求められており、漠然とではあるが同じようなことを考えていたからである。
ちょうど、私の今の職場自体が公(官)と民間のはざまに位置するようなポジションにあり、構成メンバーも様々である。さらにその職場の中で、官民の異なる経歴・経験をもつメンバーが揃うチームの中で、今までにない新たな評価の仕組みを創ることを求められている。
すでに、官には官の、民には民のそれぞれに、長い時間をかけて作り上げた評価の仕組みがある。官の立場に立つ人は官の仕組みで思考し、民の立場の人は民の仕組みで思考する。そこには深い溝がある。どちらかの立場にたって、自分たちの仕組みの正統性を主張する限り、互いに相容れることはない。
双方が納得する新たな仕組みを考え出すには、双方が相手の立場、相手の肌感覚を理解しすることが大前提となる(それこそが、相互主観性であろう)。その上で、双方の世界に通じる評価の仕組みを築けるか?「3年で形にしてくれ」というのが経営トップからのミッションである。
民間側にいる私としては、まず官の仕組みを理解しようとし、彼らの仕組みの根底にある制度の哲学をずっと考えながら、議論し調査してきた。常に、念頭にあったのは、彼らのやり方にもそれなりの必然性と合理性があってここまで来ているはずなので、彼らのやり方を尊重すべきは尊重し、決して頭ごなしに否定したりしないということだった。

ここでキーワードが「相互客観性」ではなく「相互主観性」となっている点に、私としては勇気づけられた思いである。ミッションで与えられた3年とい時間は、すでに半年が過ぎている。なんとか、残り2年半、相互主観性を念頭において、なんとかミッションを全うしたいと考えている。

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