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2012年2月26日 (日)

第37期棋王戦五番勝負第2局、挑戦者の郷田真隆九段が久保利明棋王に勝って1勝1敗

将棋界の七大タイトルの中で、年度で一番最後に始まる棋王戦は、2月、3月で五局の番勝負をこなす。今期の場合、1月に始まって3月まで七番勝負を戦う王将戦とタイトルホルダーが同じ久保利明棋王・王将であり、2つのタイトル戦のスケジュールが入り組むように組み立てられている。(久保が棋王・王将の二冠を防衛した前期、棋王位防衛と王将位獲得を果たした前々期も同様だった)

前期は棋王戦で渡辺竜王、王将戦で豊島将之六段と自分より若い挑戦者の退けた久保二冠だったが、今期は棋王戦では郷田真隆九段、王将戦では佐藤康光九段と久々のタイトル復帰を狙う「羽生世代」の2人のA級棋士を迎え撃つ。さらに、久保二冠は順位戦でA級陥落の危機に瀕している。

久保二冠の1月以降の3棋戦の成績を見ると、
1月7・8日王将戦第1局●(負け)
1月12日順位戦第7局●(負け、対羽生善治二冠)
1月25・26日王将戦第2局●(負け)
2月1日順位戦第8局○(勝ち、対佐藤康光九段)
2月5日棋王戦第1局○(勝ち)
2月15・16日王将戦第3局●(負け)
2月21・22日王将戦第4局○(勝ち)
という状況になっている。

順位戦では、第8局で佐藤九段に勝って2勝6敗として暫定8位となり、最終戦の丸山忠久九段戦に勝てば自力で残留が決められるところまできたが、相手の丸山九段も陥落候補組で勝たない限り残留の目はないという鬼勝負。この大一番が3月2日にある。
王将戦は3連敗でカド番に追い詰められたが、直近の第4局をなんとかものにして1勝3
敗。防衛にのぞみをつないだ。
2月の成績次第ではA級陥落確定や王将失陥も確定してしまう可能性もあったが、なんとか凌いで、すべてが決まらない状態で臨んだのが今回の棋王戦第2局である。
対する郷田九段はA級残留は12月の第7局で早々に確定。2月に入り棋王戦第1局で敗れ、ベスト4まで進んだ朝日杯オープンでも準決勝で広瀬七段に敗れたものの、その後の棋聖戦決勝トーナメント1回戦、王座戦の二次予選決勝ではそれぞれ 飯塚七段、鈴木八段に勝っている。本局を迎えた。
久保棋王は勝てば郷田九段をカド番に追い込みタイトル防衛に王手がかかる。他の他の棋戦で追い込まれていることもあり、棋王戦では優位な立場を築いて余裕を持ちたいところ。郷田九段は逆の立場なので、なんとか本局に勝って1勝1敗のタイに持ち込みたい。どちらも勝ちたい1局。

第2局は久保棋王の先手。どんな戦法を選ぶかの選択権をもつ立場。▲7四歩、△3四歩とお互いの角道を開けたあと、久保棋王の得意の三間飛車石田流に進んだ。久保棋王は意欲的に手を進め、定跡から離れて飛車銀両取りの▲5五角を放つ。結局、この久保棋王の仕掛けは、先手久保棋王にとって飛車銀交換も駒損の変りに馬を作るという結果になった。この馬を作る角成が21手目で、先手玉は▲4八の位置、後手玉に至っては△5一の居玉の位置のままで、激しい戦いが始まった。
お互い、玉の守りは貧弱なので、どちらが攻め勝つかの勝負。しかし、いくら馬を作ってるとはいえ、飛車銀交換で駒損の先手久保棋王は、局面が落ち着いて持久戦となると、勝ち目がなくなる。常に攻め続け、その過程で駒損を回復しつつ、相手を追い込んでいく必要がある。
一方、郷田九段は当面は受けに回り、なんとかつけいる隙を与えずに、久保棋王の攻めを切れ筋に追い込み、反転攻勢の機会をうかがう展開になった。郷田九段は、郷田陣の桂馬・香車をとって駒損を回復しようとする久保棋王の▲2二角打に△1二飛車と打って、駒損回復の機会を与えず、飛車銀交換の駒の損得の差を維持したまま、局面の打開を目指す。

結果的に郷田九段が、久保棋王が繰り出す数々の仕掛けを全て受けきって、やや切れ気味となったところで、反転攻勢に出て、飛車切りを交えて、久保棋王を一気の寄せ切った。

今回の観戦は、ニコニコ動画での森下卓九段の解説と、加えて将棋ソフトの「激指9」の検討モードでの形勢分析と最善手、次善手等の提示をあわせて観戦したが、乱戦になってからの郷田九段の指し手のほとんどが「激指9」の示す最善手だった。一方、劣勢だった久保棋王は時々「激指9」の示す最善手・次善手等の候補手にない手が指すことがあった。

前回の第1局は序盤でわずかにリードした久保棋王を郷田九段が追いすがり粘るも、久保棋王が勝ちきるといういわばがっぷり組んだ四つ相撲で158手、終局が19時29分と夕食の時間帯までの長い将棋だったが、今回が序盤からの急戦となり、88手、終局が17時16分と早い終局だった。

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(第2局終局後、大盤解説会場で話す郷田九段、中継ブログ「棋王戦中継plus」より)

簡単にまとめてしまえば、久保棋王の無理筋の仕掛けを、郷田九段が的確に咎めて勝ちきったということになるだろうか。
久保棋王が、従来にない新手の攻めを採用したのは、毎回好調の挑戦者を迎え、タイトルを防衛するためには、いつも通りの将棋を指しているだけでは勝ちきることは難しいので、リスクをとって新手に取り組むぐらいでないと覚束ないという面もあると思うが、実力が拮抗する相手とあれば、奇襲戦法で相手に将棋を指させないうちに勝ちたいと思いもあるように思う。久保棋王が石田流の本流の展開に持ち込まず、奇襲に出たのは、A級棋士の地位の維持と王将、棋王の二冠の防衛という三つの成果を出さなければならない中、下手をすると三つとも失いかねない状況の中で、早く成果を出したいという「焦り」の気持ちがあったのではないかという気がする。

郷田ファンの私の願いとしては、郷田九段の棋王位奪取である。1勝1敗としたことで、五番勝負は振り出しに戻り、新たにこれからの三番勝負で2勝することが求められる。先手番となる3月4日(日)の第3局を確実に勝って、自らの誕生日3月17日(土)に開催される第4局で棋王タイトルという誕生祝をつかみとってほしい。

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コメント

よかったですね。3月には1日の竜王戦、2日の順位戦、4日の棋王戦と対局がたて込んでいます。郷田九段、体調を整えて臨んでください。好局を期待しています。

投稿: 郷田九段を応援しています♪ | 2012年3月 1日 (木) 20時12分

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