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2012年4月 7日 (土)

「将棋は勝った方が強い」郷田真隆新棋王誕生を祝う

第37期棋王戦五番勝負の第4局で、郷田真隆九段が久保利明棋王(当時)を破り、3勝1敗棋王タイトルの奪取を果たしてから、3週間ほどになる。
棋王位奪取後、竜王戦ランキング戦1組2回戦を戦い(深浦康市九段に惜しくも敗れた)、47戦で29勝18敗、勝率0.6170で2011年度のスケジュールを終えた。
タイトルホルダー、A級棋士などのトップ棋士の中で、今期、勝率6割を超えたのは郷田棋王のほかは、渡辺明竜王(39勝12敗、勝率0.7647)と羽生善治二冠(44勝19敗、勝率0.6984)だけであり、今回のタイトル奪取も決してフロックではない。

2009年4月~6月の3ヵ月にわたる第67期名人戦七番勝負で羽生善治名人と死闘を繰り広げ3勝4敗で敗退して以来、タイトル戦から遠ざかっていた。
羽生名人に対し、3勝2敗とカド番に追い込みながら、名人位奪取に失敗した2009年度はプロ棋士になって初めて年度で負け越すという不本意な結果を残したが、昨年度(2010年度)には、40戦25 勝15 敗、勝率0.625まで復調し、棋聖戦、日本シリーズ、朝日杯オープンでは準決勝まで駒を進めている。しかし、いずれも敗れ、挑戦者決定戦や決勝戦に駒を進めることはなかった。

今年度(2011年度)も、棋聖戦、日本シリーズ、朝日杯オープンでは今回も準決勝まで進みながら敗れていた。その中で棋王戦では、2005年に、第31期棋王戦挑戦者決定二番勝負に進んで以来の活躍が続いていた。挑戦者決定トーナメントの2回戦で、横山泰明五段、3回戦で深浦康市九段、準々決勝で松尾歩七段、準決勝で中川大輔八段、決勝で広瀬章人七段と勝ち続け、本戦決勝勝者として挑戦者決定二番勝負に進んだ。敗者復活戦を勝ち上がった広瀬章人七段相手に第1局は落としたものの、第2局は勝って挑戦を決めた。
今回、ツキも郷田棋王に味方したと思われる点もある。本戦決勝までの戦いの中で、タイトルホルダー・A級クラスのトップ棋士と対戦したのは、3回戦の深浦康市九段戦だけ。同じ山に渡辺明竜王がいたが、松尾七段に敗れていた。また、広瀬七段側の山にいた難敵羽生二冠も3回戦で木村一基八段に敗れていた。
また、モバイル棋譜中継や棋譜でーたべーすで、将棋の内容を見ると、劣勢だった将棋を逆転したものもあり、挑戦権獲得までの8戦を7勝1敗で勝ち抜いた。

20120317

『将棋世界』の2012年3月号には、棋王戦挑戦者の郷田九段のインタビューが載っている。
聞き手が「タイトル戦に13回出場して獲得3回は郷田の実力からするとアンラッキーな結果では?」との問うと、
「僕は勝負将棋に臨むときの気持ちや執念が甘かっただろうと思いますね。番勝負の最終局とか挑戦者決定戦で負けた数は、僕はおそらくプロ棋士の中でも相当上位に入るでしょう。そうして思うのは、『勝負というのは強い方が勝つのではなく、勝った方が強い』ということでしょうか。結果がすべてであって、タイトル戦に13回出て10回負けたのは自分が弱かったということ以外の何ものでもないと思います。」
それを受け、さらに聞き手が「今回の挑戦ではその辺の苦い経験も生かして、結果にこだわって執念と気迫でタイトルを取りに行くという感じでしょうか?」と重ねて問われると、
「まあ、話の流れからするとそういうことになるんでしょうかね。私も普通の棋士になったということでしょうか(笑)。(中略)以前は、将棋の真理を追究したい、将棋というゲームを突き詰めるとどうなるのだろうかというところに気持ちが行ってあれこれ考えていたのですが、最近は対局に全力を注ぐという棋士として本来あるべき姿に戻ってきたという感じがしてきています。一局一局に全精力を注ぎ、自分の将棋を久保さんにぶつける。それで結果が残せるならそれでいい。そう考えて五番勝負に臨みたいと思います」
私は、この記事を読んで、これまでややもすると将棋の真理追究派だった郷田九段のタイトル獲得への執念を感じ、これなら棋王タイトルが奪取できるのではないかという気がした。

郷田新棋王の姿勢の変化には、昨年3月11日の東日本大震災の影響があったようだ。当日、郷田九段は、東京の将棋会館で王座戦二次予選の決勝で村山慈明五段と対局中だった。当日は第69期のB級1組の最終戦も行われていたので、名人戦棋譜速報に当日の将棋会館の様子がうかがえるが、15時前の地震で対局は中断、16時に再開されたが、直後に余震があり再び中断。16時45分再度再開。余震も続き、将棋に集中できる状況ではなかったと思われる。棋王獲得後に、大震災をきっかけに対局への心境が変ったと言い、「対局させてただけることは本当にありがたい。自分なりに出来ることをするということをより強く思った」と語ったいう(「週刊将棋」3月28日号、『将棋世界』2012年5月号)

もうひとつ『将棋世界』の記事で、書いておきたいのが、2012年4月号の「棋士が聞くプロ対談第6回」豊川孝弘七段×近藤正和六段の対談だ。豊川七段は羽生二冠、森内名人、佐藤王将、郷田棋王などと同じ昭和57年に奨励会に入会しプロ棋士となった同期生。対談の中で、司会者が「羽生、屋敷、森内、佐藤の才能は?」と二人に問いかける。
豊川七段は「森内、佐藤も強いけど、羽生と屋敷は異質。あの才能はけた違い。」と語り、さらに、その屋敷が一時輝きが失われていてがっかりしたこと、その屋敷が最近輝きを取り戻しているのは努力しているからだろうと語り、問われなかった郷田についても触れている。「天才にも努力は必要なんだ。その意味では郷田もすごい。彼の才能は羽生、屋敷に比べたら大したことない。でも、いまでも進化しているでしょう。彼は40を過ぎても怖いくらい将棋に浸りきっている。これからもたくさん伝説を作ると思う。」

郷田新棋王の努力は同業の棋士から見ても一目おかれるレベルということだろう。対森内戦だったか、羽生戦だったかは忘れてしまったが、名人戦で郷田が敗れた時、谷川九段が郷田が努力を続ける真摯な姿勢にを評して、「将棋の神様はいつか彼に微笑むだろう」とコメントしていた。

4回目のタイトル獲得は、真摯に将棋に向き合う郷田の姿勢が引き寄せたものといえるだろう。祝・郷田真隆新棋王。

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