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2014年12月26日 (金)

郷田真隆九段、2つの三度目の正直で王将挑戦へ

2014年のクリスマス(12月25日)、第64期王将戦挑戦者リーグのプレーオフで郷田真隆九段が難敵羽生善治名人を破り、渡辺明王将への挑戦者に名乗りをあげた。

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(毎日新聞HPより)

挑戦者リーグでは出だしで佐藤康光九段、羽生名人と強敵に連勝。さらに屋敷伸之九段にも勝ち、3連勝対決の深浦康市九段戦にも快勝。リーグ気戦の日程の都合で、6回戦の郷田vs豊島戦の前に、他の対局者の6回戦が終了、1敗で郷田九段を追っていた羽生名人、深浦九段がともに敗れ、1敗がいなくなった。残り2戦で1勝すれば挑戦が決定と「マジックナンバー1」状態となった。しかし、そこから将棋の神様は郷田九段に厳しい仕打ちをする。対戦成績では分のいい豊島将之七段、三浦弘行九段にあえなく連敗。内容も4連勝時の将棋と比べると良くなかった。圧倒的優位に立って挑戦権獲得を意識してしまったのかもしれない。2勝2敗から2連勝した羽生名人に羽生名人に並ばれプレーオフとなった。

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郷田九段は王将戦挑戦者リーグの常連で今から20年以上前になる第43期に初めてリーグ入り。以降22年間で15回リーグ入りし、そのうち2回、第44期と第52期にプレーオフまで駒を進めている。しかし、いずれも羽生現名人に阻まれ、挑戦に至らなかった。

郷田九段は、一昨年度にあたる昨年2月に当時の渡辺竜王に10年ぶりに獲得したタイトル棋王を奪われた。昨年度は棋聖戦、王座戦、竜王戦で挑戦者決定戦まで進みながら敗退。NHK杯では初優勝を果たしたが、A級順位戦では最終戦で敗れ、陥落した屋敷九段と同じ3勝6敗ながら順位差でかろうじて陥落を免れるという戦績。今年も王将戦の挑戦者リーグまでは、NHK杯選手権者として臨んだNHK杯では初戦敗退、タイトル戦の予選でも目立った成績を残せていない。王将戦リーグで深浦九段に勝ったあとは、同リーグでの豊島七段、三浦九段戦での連敗、ベスト4に残った棋王戦の挑戦者決定トーナメント敗者復活戦で深浦九段に敗退、A級順位戦でも広瀬八段に敗れ、4連敗。今年度29戦で14勝15敗とうとう星一つ負け越しになってこのプレーオフを迎えた。不調と言われてしかたない。

郷田ファンからみても、今期好調の羽生名人相手がプレーオフの相手ということで諦め半分。ましてリーグ戦、プレーオフと羽生に連勝という結果は予想しがたく、下馬評も羽生有利だったに違いない。振り駒の結果、手番も後手。厳しい条件ばかりだ。不調は本人も自覚していたようで、「いい内容の将棋を指したい」という思いで臨んだようだ。

相矢倉となった戦いは、難解で、なかなか優劣がつかない。棋譜中継のコメントを見ると解説のプロ棋士たちの形勢判断は、中盤以降の駒のぶつかり合いから終盤にかけて、先手の羽生名人が少し良いということだったが、将棋ソフトの「激指11」の検討モードで遡って検証してみると、中盤から終盤の最初はむしろ後手の郷田九段が微差でリードしていた。その後、盤面の中央で金銀がぶつかりあい、やりとりが激しくなる中で、若干先手リードに変わったか?という程度だった。

最終盤では、「激指11」が示す候補手にはない勝負手も飛び出し、ソフトの検討レベルが上がる都度優劣の評価が入れ替わり、「激指11」も自分のデータの蓄積のない手の評価に時間がかかっているようだった。

将棋界のトップクラスの頭脳がつばぜり合いする戦いの中では、体調、残り時間の多寡などが、一手一手の判断に微妙に影響してくるのだろう。3日前の22日に棋王戦挑戦者決定二番勝負第1局で深浦九段と戦い、棋王挑戦を決めて間もない羽生名人と12日のA級順位戦6回戦で広瀬八段の敗れたあと、対局が2週間近くなかった郷田九段の差も無視できないだろう。最後には、諦めずに食らいついていった郷田九段に軍配が上がった。

郷田九段は、昨年のように二つの棋戦の挑戦者決定戦まで進みながら、どちらも負けるというここ一番に弱いという面も見せる。2012年の棋王戦で10年ぶりタイトル獲得や、昨年、2つの挑戦を逃したあとのNHK杯優勝、そして今回のマジック1から2連敗したあとのプレーオフで羽生名人に勝って挑戦決定と、もう期待するのはやめとこうと思う頃、サプライズを見せてくれるので、やっぱり郷田ファンをやめられない。

今年の王将リーグ戦で4連勝でマジック1となって3戦目のプレーオフでようやく挑戦を決めたこと、44期、52期と2度のプレーオフで敗れた羽生との3度目のプレーオフに勝ち王将初挑戦を決めたということで、2つの三度目の正直が重なった。

最後まで諦めず、土壇場からの踏ん張りで勝利をものにするという心意気で七番勝負では渡辺明王将からタイトルを奪取し、2年前の棋王戦の雪辱を果たしてほしい。

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