小野不由美著『十二国記』シリーズ (新潮文庫版)を読み終わる
『十二国記』というタイトルは以前から気になっていた。講談社文庫を読んでみようかと思っていながら、なんとなく手に取らないまま過ぎていた。
2012年7月に新潮文庫からエピソード0として『魔性の子』、エピソード1『月の影 影の海』(上下巻)の3冊がまとめて出版された機会に、すぐ買って、引きこまれるようにすぐ読み終わった。
その後は、2ヵ月サイクルで『風の海 迷宮の岸』(エピソード2)、『東の海神 西の滄海』(エピソード3)、『風の万里 黎明の空』(エピソード4、上下巻)、『丕緒の鳥』(エピソード5、短編集)、『図南の翼』(エピソード6)、『黄昏の岸 暁の天』(エピソード7)、『華胥の幽夢』(短編集、エピソード8)が発刊された。
新刊が出るたびに買い求めていたが、エピソード2の『風の海 迷宮の岸』購入後、読み出したが、最初のところで躓いてそのまま読まずに新刊だけがたまっていた。
先月の月初、風邪で体調を崩して仕事を一日休んだ時に、病院で薬をもらったあとは、家で安静にしてるだけなので、この際、積読本がたまっている『十二国記』を読もうと、躓いたエピソード2の『風の海 迷宮の岸』に再び挑戦。改めて読み始めると、一気に進み、二日で読み終わった。その後も、『東の海神 西の滄海』(エピソード3)、『風の万里 黎明の空』(エピソード4、上下巻)、『図南の翼』(エピソード6)、『黄昏の岸 暁の天』(エピソード7)とメインストリーをまず読み、短編集の『華胥の幽夢』(エピソード8)、『丕緒の鳥』(エピソード5)の順で、ほぼ一日1冊のペースで一気に読み終えた。
十二国記は、ハイ・ファンタジーあるいは異世界ファンタジーと呼ばれるジャンルで、作者が独自に作り上げた世界の中で、物語が進行する。その点では「ゲド戦記」や「守り人・旅人」シリーズ(上橋菜穂子)に近い。
純粋なハイ・ファンタジー(異世界ファンタジー)と異なるのは、十二国の世界と蓬莱と呼ばれる日本が繋がる時があり、本来、十二国の世界で生まれるべき命が、日本で生まれ、十二国の世界に戻るという話もいくつかある。現実世界から異世界に行くという点は「ナルニア国」シリーズにも通じるところもあるが、ナルニアの場合、現実から異世界に行き、異世界で活躍したあと、現実世界に戻ってくる往還記であるが、十二国記の場合、むしろ本来十二国で生まれるべき存在が蓬莱(日本)に流されて生まれ、十二国記に戻るという構造だ。
十二国記では、その名の通り、十二の国から成り立つ世界が描かれる。十二の国は、慶、奏、範、柳、雁、恭、才、巧、戴、舜、芳、漣。それぞれの国に王と王を選び補佐する麒麟がおり、各国も王と麒麟を軸にした物語だ。
エピソード0の『魔性の子』は、講談社で出された十二国記のシリーズに先だって新潮社から出されていた現代ホラー小説で、それだけで独立しても十分読めるが、読み進むと十二国のうちの戴国に関わる物語であることが、明らかになってくる。
エピソード1『月の影 影の海』は、慶国に関わる物語。雁国王と麒麟も登場する。
エピソード2『風の海 迷宮の岸』は、再び戴国に関わる物語。慶国の麒麟も登場する。
エピソード3『東の海神 西の滄海』は、雁国の現国王と麒麟の国作りの話。
エピソード4『風の万里 黎明の空』は、『月の影 影の海』の後の慶国の話。再び、雁国王と麒麟も登場。芳国、才国の話も登場する。
エピソード6『図南の翼』は、これまでのシリーズとはあまり関わりのなかった恭で国王が選ばれる時のエピソードだ。
エピソード7『黄昏の岸 暁の天』では、これまで別々の流れで語られてきた慶国と戴国が関わり合いになり、雁国王と雁国の麒麟も登場する。
古代中国の春秋戦国時代を彷彿とさせる国名や国の仕組みだが、十二国記では国と国は戦わない。いかに、それぞれの国の麒麟がどのような国王を選び、その国王が国をどうを治めるかがテーマだ。
シリーズ全体として見たときには、エピソード7『黄昏の岸 暁の天』は、物語が完結しておらず、この話の中で語られた謎のいくつかは解明されないままになっており、むしろ前編が終わったという印象だ。現在、作者が書き下ろしている新作長編が、エピソード8の解決編となるのはわからない。
詳しいことを書きすぎるとネタバレになってしまうので、詳しくは書かないが、ファンタジー好きな読者には、お勧めである。
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