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2015年5月の記事

2015年5月19日 (火)

第64期王将戦就位式、祝・郷田真隆王将!

今日は、有給休暇を取って東京ドームホテルで行われた郷田真隆王将の就位式・祝賀パーティーに参加した。
郷田ファンの私にとって、郷田九段の5度目のタイトル獲得はめでたいことこの上ない。特に、この64期王将戦七番勝負はドラマチックな場面も多く、単にファンとしてうれしいという以上の何かを感じさせてくれる番勝負であった。

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今回の王将位獲得の伏線は、昨年第63期に遡ると私は思っている。王将戦の挑戦者になるには、7人総当たりの挑戦者リーグで優勝しなければならない。これはA級順位戦以上の狭き門であり、前年のリーグ上位4名が残留し、そこに2次予選を勝ち上がった3名が加わる。前期残留者は前期成績で1位から4位までの順位がつき、2次予選からの勝ち上がり組は、5位で3名が並ぶ。リーグ戦の結果、下位3名が陥落するが、その際同成績の場合は、順位が低い方が陥落となる。これまで、郷田九段は15回挑戦者リーグに参加しているが、2次予選を勝ち上がったものの、残留者と同成績ながら順位差での陥落も多かった。
昨年の第63期挑戦者リーグも2次予選勝ち上がりの順位5位。3勝2敗どうしの対戦となった最終戦の深浦九段(順位2位)戦。勝って4勝2敗なら残留、負けて3勝3敗なら順位3位の豊島七段を上回れず陥落という勝負に勝って4勝2敗(順位3位)で残留を決めた。
2次予選からの参加だと、まずはリーグ参加を勝ち取ることが目標となるが、リーグ残留なら、残留者3名と2次予選組3名の顔ぶれを眺めて、対策を練る時間がある。
王将戦の挑戦者リーグの定員が8名から7名の減った第31期以降第64期までの34回を見ると、リーグ残留者上位4名が挑戦者となったのが23回、2次予選組から挑戦者が出たのが11回である。残留者が1名多いことを加味しても、やはり残留者の方が結果を出しやすい面はあるのだろう。

対策が奏功いたのかどうかわからないが、郷田九段は今期のリーグ戦では、羽生、佐藤、屋敷、深浦と強豪を破って4連勝。5戦めを迎える時点で、残る豊島戦、三浦戦で1勝すれば挑戦決定というところまでこぎ着けた。しかし、その後2連敗で羽生名人に追いつかれ、年末12月25日のプレーオフとなった。
4連勝2連敗で、羽生名人に追いつかれたら、普通、流れは羽生である。しかし、ここで勝ち、挑戦権を獲得したところから、第64期王将戦の郷田劇場は始まっていたようだ。

とはいえ、相手は羽生名人と互角以上の成績を残す新世代の雄「渡辺明」。郷田自身も2年前棋王戦五番勝負で1勝3敗でタイトルを奪われた。その後の対戦成績も分が悪い。
今日の就位式で挨拶した谷川浩司将棋連盟会長も、「郷田さんが勝つのは難しいのではないかと思っていた」と語った。
周囲も渡辺乗りが多い中、第1局は完敗、第2局は優勢に進めていた将棋を好機を逸して逆転負け。特に、第2局の負け方を見て、これは郷田九段が4タテを食らって敗退と誰もが思ったに違いない。

今日の郷田九段の挨拶では「年末のプレーオフから第1局(1月11日)まで、ほとんど日がなく、何の準備もできないまま臨んだ。」と語っていた。
それでも、タイトル戦を戦う中で、徐々に調子を取り戻したのだろう。角換りで2敗のあと、第3局渡辺(先手)の矢倉に一矢報い、第4局渡辺(後手)の四間飛車を粉砕した。
これが、棋王戦や棋聖戦のような五番勝負であれば、2連敗したところでカド番となり、精神面でも追い詰められ、逆転できたかどうかはわからない。七番勝負だったことが幸いした面はあるだろう。

第3局、第4局とも郷田将棋の内容もよく、第2局も優勢だったことを思うと、シリーズ中盤時点では、内容的には郷田リードの印象が強かった。素人目には、第4局勝ちたい渡辺王将が振り飛車を選択したところに渡辺王将の焦りのようなものを感じた。同時並行で進んでいた渡辺vs羽生の棋王戦五番勝負の影響もあるだろうが、純粋居飛車党で振り飛車破りに定評のある郷田九段に四間飛車で挑んだのは、タイトル戦巧者の渡辺王将としては戦略ミスだったような気がしてならない。

4局終わって2勝2敗。2連敗後の2連勝で、流れは郷田にありと思ったが、残る3局は記憶に残る勝負となった。
第5局は3月でありながら季節外れの暴風雪でスケジュール通り会場の佐渡入りができず、持ち時間が1時間減るという変速対局。
第5局も再び角換りをなった戦いは郷田有利に進めながら、勝ちのチャンスを見逃して逆転負け。とうとう後がなくなった。

そして迎えた伊豆・河津町での第6局。将棋世界の2014年度の10局の第2位に選ばれた対局だ。このシリーズ4回めの角換りとなり、途中まで郷田有利。しかし、郷田九段も決めきれない。双方の脳髄を絞りきったような勝負手が次々と飛び出し、ネットを通して観戦する側も手に汗握る。1分将棋となってもハイレベルな応酬は続く。最後に消耗著しい両者を象徴するように郷田九段の見落としを渡辺王将も見落として、郷田九段に勝利が転がり込んだ。ほぼ、同時期に棋士と将棋ソフトが戦う電王戦も行われていて、決して将棋ソフトならしないであろうミスがトップ棋士二人の間で起きたところに、観客はソフトとは違う人間らしいドラマを見たように思う。

第7局に持ち込まれた七番勝負、振り駒で郷田九段が先手。郷田九段はこのシリーズ初めての相掛かりを選択。なんとかリードを保って、青森・弘前の地で王将位のタイトルを渡辺明から奪取した。2年前の棋王戦の借りを返した。

今日の就位式の挨拶でも「今回の七番勝負は完全燃焼し悔いはない」と語った。今回の王将戦七番勝負は、郷田王将にいくつかの初めてをもたらした。まずは、初めての王将タイトル。王将戦史上では、初獲得の年齢としては最年長の44歳。
そして、大きな自信となったであろうのは、七番勝負で3勝3敗となったあとの第7局での初勝利。過去、羽生への王位挑戦(第35期)、2度の名人挑戦(65期対森内、67期対羽生)の3回で3勝3敗の第7局で敗れている。リアルタイムで観戦した2度の名人挑戦の第7局は、いずれも淡泊な終わり方で、どうしても名人タイトルを取るんだ取りたいという執念が感じられなかった気がする。
しかし、今回の王将戦では七番勝負を通して、棋譜からどうしても王将のタイトルが取りたい、取るんだといううめき声が聞こえるようだった。「完全燃焼」という言葉にその思いが込められているように思う。

今日の挨拶からも、この王将戦で来年も七番勝負を戦えることを棋士冥利に感じている姿とだからこそ来期も良い内容の将棋で勝ちタイトル防衛を果たしたいという意思がにじみ出ていた。

タイトル獲得5期以上の棋士は、将棋界の歴史の中でこれまで16人しかいない。現役では羽生90期、谷川27期、渡辺15期、佐藤(康)13期、森内12期、加藤一二三8期、南7期と続き、久保5期、高橋道雄5期のと並んだ。まずは、次の防衛戦を確実にものにして6期とし歴代13位としてほしい。8期となれば、過去10人。できれば、同世代の森内12期、佐藤13期の成績には肩を並べてほしいものだ。

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