門田隆将『疫病2020』
何事も渦中にいると、目の前の事に追われがちだ。年明け以降の新型コロナウィルス感染拡大の中での出来事も、メモして残したおかないと、いつ何が起きて、自分が何をしたかさえ曖昧になってくる。
そんな中で、その時、武漢や日本で何が起きていたか、いち早くまとめた本が出た。門田隆将の『疫病2020』(産経新聞出版)。アマゾンで見つけてすぐ注文し、昨日届いた。
この作者は、東日本大震災の時の福島原発事故の現場での格闘を描いた『死の淵を見た男』で知った。膨大な情報収集と緻密な取材で執筆していると思わせる内容だった。
『疫病2020』の方は、まだ、読んでいる途中だが、いかに自分が、一連の新型コロナウィルス感染拡大の真相を知らなかったかを痛感した。
中国が感染発生当初、露骨に情報の隠蔽をしたこと、日本でも後に感染拡大防止や治療の最前線に立った医療の専門家も、当初は楽観的なコメントをしていたこと、安倍政権や厚生労働省は全く危機感を欠き無為無策で、この不作為が後に国民に大きな負担を強いることになること。
再び、緊急事態宣言による自粛が緩和され、6月以降少しずつ日常が回復され出したこととに少し遅れて再び感染者が増え始めた中、読む価値があると思う。
政権や厚生労働省などの言うことを鵜呑みにせず、自分の身は自分で守るしかない。
<追記2021年5月22日>
本作の著者門脇隆将氏を取り上げた『疑惑の作家「門田隆将」と門脇護』(柳原滋雄著、論創社)を読んだ。この本によれば、2011年に門脇氏は、日航機の御巣鷹山墜落事故を題材にした過去の著作『風にそよぐ墓標』で、取材先の遺族の著書『雪解けの尾根』からの盗用を理由にその遺族から著作権侵害差止等請求の民事訴訟を東京地裁に提訴され、2013年に1審(東京地裁)、2審とも門脇氏側が敗訴、2015年には最高裁で門脇氏側から上告が棄却され、14箇所の著作権侵害が認定されている。知らなかったとはいえ、自身の不明を恥じる次第だ。
『死の淵を見た男』や『疫病2020』で著作権侵害があるわけではないと思うが、門脇氏は、最高裁での上告棄却に至っても、自らの非を認ることなく、著作権侵害をした相手に謝罪することもなく、自己正当化をしている。その姿勢には失望せざるを得ない。
物書きをなりわいとする人が、著作権侵害で民事訴訟を起こされて最高裁でそれが確定しても、謝罪をする訳でもなく、引き続きノンフィクション作家として作品を書き続けられる現在の日本のマスコミや出版界の対応にも疑問が残る。(百人一首を題材にした漫画『ちはやふる』の作者末次由紀は、『ちはやふる』以前の作品で、井上雄彦の作品からの盗用をネット等で指摘され、謝罪、既刊の作品の絶版、1年以上の謹慎(漫画家活動を停止)を経て、復帰している。裁判沙汰になったわけではないが、そこまでやっている。)
同氏がもともと週刊新潮の記者というマスコミ界にとっての身内だからだろうか?
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