2009年8月23日 (日)

『獣の奏者』新聞全面広告での松田哲夫氏のコメント

今朝の新聞に『獣の奏者Ⅲ探求編』『同Ⅳ完結編』をメインにした『獣の奏者』シリーズのカラー印刷の全面広告が掲載された。

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版元である講談社が100周年の記念出版作として、本作品をより多くの人に読んでほしいという意気込みが感じられる。

広告には、作者や以前紹介した作家佐藤多佳子のコメントが書かれているが、その中にTBSの「王様のブランチ」で「松チョイ」という書評のコーナーを持つ松田哲夫氏のコメントも載せられていた。(前作の『獣の奏者Ⅰ闘蛇編』『同Ⅱ王獣編』も出版当時同コーナーで取り上げられたことも、前作ヒットの一因だろう。)

松田氏の推薦のコメントは

「これは、いまを生きるすべての人びとに向かって、声高ではないが鮮烈なメッセージを発している物語なのだ。世界ファンタジー史上に残る傑作ではないだろうか。」

やはり、多くの本を読み込んでいる松田氏にとっも、『獣の奏者Ⅲ探求編』『同Ⅳ完結編』の伝えようとするメッセージ性は印象に残るものであったのだろう。

作者の発するメッセージについて、老若男女それぞれの立場で、それぞれの受け止め方、読み方がある作品だと思う。

読後の印象に強さから考えると、今年度の本屋大賞の有力候補だと思うし、「直木賞」など文学作品に贈られる有力な賞を受賞してもおかしくない作品だと思う。一人でも多くの人に読んでほしい作品である。

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2009年8月19日 (水)

上橋菜穂子著『獣の奏者』の続編『Ⅲ探求編』・『Ⅳ完結編』は大人のための現実の物語だ

『獣の奏者』の続編『Ⅲ探求編』、『Ⅳ完結編』を読み終わった。前作『Ⅰ闘蛇編』、『Ⅱ王獣編』を上回るスケールで読者に迫り、読者ひとりひとりの生き方を問う物語だ。

獣の奏者 (3)探求編

獣の奏者 (4)完結編

作者上橋菜穂子と新刊に差し込まれたPRのリーフレットには同い年の作家佐藤多佳子の次のようなコメントがある。

「凄い物語だ。痛みと希望の物語だ。異種の生物が共存するこの地球の過去と現在に未来について、思わずにいられない」(佐藤多佳子)

前作では、異形の生物として戦闘に出て他国軍を蹂躙する力を持つ巨大な「闘蛇」を育てる闘蛇衆の村から話は始まる。その「闘蛇」さえ屠ってしまう力をもつ獣の王ともいえる「王獣」。闘蛇衆の村で育った娘エリンは、王獣の美しい姿に魅せられ、王獣の世話をし生態を学ぶうちに、その王獣を操る技を身につける。
エリンの国では、闘蛇軍で国を他国の侵略から守る大公と国の支配者である真王との間に不信感があり、国政は不安定で、それぞれの領民たちも反目している。真王を暗殺しようとするグループもいる。そんな中、闘蛇の天敵ともいえる王獣を自由に操るエリンは否応なく国の政治の波に翻弄される。しかし、前作ではエリンの決意と行動で、物語は一つの結末を迎える。

続編にあたる『Ⅲ探求編』、『Ⅳ完結編』では、前作から10年以上が過ぎ、エリンは一児の母となっている。ある闘蛇衆の村で起きた闘蛇の集団での変死の原因追及にエリンが派遣されるところから、続きの物語は始まる。
危険な兵器ともなる闘蛇や王獣には、育てる際に数々の掟や禁忌(タブー)がある。なぜ、そのような掟や禁忌があるのかを、解き明かそうエリンが東奔西走する『Ⅲ探求編』。掟や禁忌の秘密が明らかになりかけるが、しかし、現実の動きがエリンに謎解きの時間を与えない。隣国がエリンの国リョザ神王国を攻めてきたのだ。掟や禁忌(タブー)の背景にある過去の出来事を解き明かせないまま、国を守るためエリンも立ち上がる。そして物語の結末へ向けて、『Ⅳ完結編』は流れていく。

『Ⅲ探求編』、『Ⅳ完結編』を通じて、人が生きることの意味、学ぶことの意味、、親子のあり方、夫婦のあり方、国のあり方、政治のあり方、戦争とは何かといった多くのテーマが語られる。その内容は、児童文学、ファンタジーといった枠組み・ジャンルを超えている。現在の混乱する日本という国のあり方、そこで生きる我々ひとりひとりへの問いかけであり、作者の考える答えでもある。

私が読んで、深く印象に残ったフレーズを紹介しておきたい。いずれも、エリンが母親として息子のジェシに語る言葉だ。

「人の一生は短いけれど、その代わり、たくさんの人がいて、たとえ小さな欠片(かけら)でも、残していくものあって、それがのちの世の誰かの、大切な発見につながる。……きっと、そういうものなのよ。顔も知らない多くの人たちが生きた果てにわたしたちがいて、わたしたちの生きた果てに、また多くの人々が生きていく……。」(『獣の奏者 Ⅳ完結編』51ページ)

「人は、知れば、考える。多くの人がいて、それぞれが、それぞれの思いで考え続ける。一人が死んでも、別の人が、新たな道を探していく。------人という生き物の群れは、そうやって長い年月を、なんとか生き続けてきた。
知らねば、道は探せない。自分たちが、なぜこんな災いを引き起こしたのか、人という生き物は、どういうふうに愚かなのか、どんなことを考え、どうしてこう動いてしまうのか、そういうことを考えて、考えて、考え抜いた果てにしか、ほんとうに意味ある道は、見えてこない……」(『獣の奏者 Ⅳ完結編』294ページ)

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2009年8月17日 (月)

上橋菜穂子『獣の奏者』続編(Ⅲ探求編、Ⅳ完結編)登場と既刊(Ⅰ闘蛇編、Ⅱ王獣編)の文庫化

2ヵ月ほど前に、子ども向けの講談社青い鳥文庫で文庫化された『獣の奏者』の既刊(Ⅰ闘蛇編、Ⅱ王獣編)を4冊に分冊化したものを読み始めたことを書いたが、期待に違わないおもしろさで、あっという間に読み終わってしまった。
途中、主人公の少女エリンが蜂飼いの男ジョウンに救われ、しばらく世話になるのだが、彼は養蜂で生活しており、エリンが興味深くミツバチの生態を観察する場面が出てくる。ちょうど『ハチはなぜ大量死したのか』を読んだばかりで、ミツバチの生態を詳しく知った直後でもあったので、その場面もよく調べられ、書き込まれているのがわかった。
既刊の2冊は、各巻の名前にも成っている「闘蛇(とうだ)」と「王獣(おうじゅう)」という2つの架空の獣を中心に展開し、そこに主人公エリンの母とエリンが絡んでいく。さらにエリンの住む国は、大公領と真王領とに別れ、そこでの政治のあり方と「闘蛇」と「王獣」は関わっており、エリンもまた国の政治に関わらざるを得なくなってくる。
国のあり方を丹念に描き、国の政治のあり方に個人の生き方が翻弄される様にリアリティを持たせる作者の力量は、「守り人&旅人シリーズ」でもすでに証明済みだが、既刊の『獣の奏者』でも裏切られることはなかった。

土曜日、都心まで外出する機会があり、帰り道書店に寄ったところ、新刊コーナーになんとその『獣の奏者』の続編となる『Ⅲ探求編』『Ⅳ完結編』が並べられていた。さらに既刊の『Ⅰ闘蛇編』『Ⅱ王獣編』が講談社文庫から文庫化され並んでいた。青い鳥文庫の4冊はいずれ手放せばいいと思い、新刊のハードカバー2冊 (『Ⅲ探求編』『Ⅳ完結編』)と文庫2冊(『Ⅰ闘蛇編』『Ⅱ王獣編』)を購入した。

獣の奏者 (3)探求編

獣の奏者 (4)完結編

獣の奏者〈1〉闘蛇編 (講談社文庫)

獣の奏者〈2〉王獣編 (講談社文庫)

2冊で完結したはずの『獣の奏者』の続きを、なぜ書くことになったかについては、ハードカバーの『Ⅳ完結編』の巻末にさらっと、文庫版『Ⅱ王獣編』の巻末に詳しく書かれている。文庫版を参照すると

(1)2009年が100周年である講談社の編集者から新作執筆を依頼されたこと
(2)(同い年で)敬愛する作家佐藤多佳子が2冊の読者として「もっと、読みたい・・・…。この完璧な物語の完璧さが損なわれてもいいから」と書いているのを読んで、エリンをはじめ作中の人物たちが生きているのだと思い、と少し気持ちが動いたこと

そして決定打として、『獣の奏者』がこれも2009年の50周年を迎えるNHK教育テレビでアニメ化が決まったことをあげている。
アニメ化のため監督や脚本家とともに、自ら執筆した物語『獣の奏者』を解体し、組み立て直す作業に着手し、その過程で『獣の奏者』の世界がより深くまで見えてきて、作者としても続きを書きたいという思いが噴出し、1年半で沸きだし『Ⅲ探求編』『Ⅳ完結編』の2冊を一気に書き上げたと書かれている。

一度完結したはずの物語が、再び書き継がれるという点は再執筆までの期間の長さは異なるものの、ファンタジーの名作『ゲド戦記』シリーズを思い起こさせる。ゲド戦記は、主人公の魔法使いゲドの少年期、青年期、壮年期を描く『影との戦い』『こわれた指輪』『さいはての島へ』が1968年~1971年に書かれる。壮年のゲドが力を使い尽くしたところで、『さいはての島』は終わるのだが、その後1990年にゲドが故郷へ帰る『帰還』、さらに2001年に『さいはての島』でゲドと旅をした王子アレンを中心にした『アースシーの風』で、ゲドたちが生きるアースシーの世界が深く語られる。

『獣の奏者』の世界も、作者上橋菜穂子の作り出した世界であるが、すでに作者の手を離れ一つの世界として多くの人びとの脳裏の中で現実世界としてとらえられているということなのだろう。
作者は、

「物語としては完結しているのに、この先を知りたいという読者の声が絶え間なく届くのは、エリンたちが物語の中で「生きてしまった」からなのかもしれない。エリンが、(中略)その後どう生きたのか、それを知りたいのかもしれない、そして、それを世に送り出せるのは私だけなのだと思ったとき、「エリンのその後」を書いてみようか、という思いが、頭をもたげてきたのでした。」(講談社文庫『獣の奏者 Ⅱ王獣編』462ページ)

と書いている。

すぐれたファンタジーといものは、作者さえ世界の観察者、語り手に換えてしまうのかもしれない。
再び『獣の奏者』の世界に浸れることを楽しんで読みたいと思う。

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2009年8月 8日 (土)

上橋菜穂子が語る「プロフェッショナルの魅力」(文庫版『神の守り人 下-帰還編-』あとがきから)

夏休みシーズンを狙ってか、しばらく出版されていなかった新潮文庫版の上橋菜穂子「守り人&旅人シリーズ」の第5作・第6作にあたる『神の守り人 上-来訪編-』と『神の守り人 下-帰還編-』が、新潮文庫の2009年8月の新作のラインナップに加わった。

神の守り人〈上〉来訪編 (新潮文庫)

神の守り人〈下〉帰還編 (新潮文庫)

結果的に10作の及ぶ大河物語となった「守り人&旅人シリーズ」の折り返しとなる『神の守り人』上下巻は、主要な登場人物である女用心棒のバルサや皇太子チャグムが暮らす「新ヨゴ皇国」に隣接し、今後の物語の展開の中でも大きな役割を果たす「ロタ王国」が舞台である。ここでは、あらすじを述べることが目的ではないので、そちらに関心のある方は、私が昨年(2008年)2月に、偕成社の軽装版『神の守り人』上下巻を読んだ時に書いた記事を参照いただければと思う。(2008年2月14日:上橋菜穂子著『神の守り人(上)来訪編』、『神の守り人(下)期帰還編』を読み終わる

ここで紹介したいのは、今回の文庫用に書かれた著者上橋菜穂子さんの「文庫版あとがき」である。「プロフェッショナルの魅力」と題されたあとがきは次のようなものである。

著者は自らが作り上げた「守り人」シリーズの主人公バルサを心底好きだとと語り、その魅力の核は、彼女がプロフェッショナルであることと続く。そして、『精霊の守り人』、『獣の奏者』が相次いでアニメ化されたことで、著者は様々な分野のプロフェッショナルと仕事をする機会を得たとし、上橋流プロフェッショナル論が開陳される。

プロになるということは、「他者から頼られるようになる」ということを意味します。この人に任せておけば大丈夫、と全幅の信頼を寄せられ、それに応えて仕事を成し遂げねければならない。
全幅の信頼を受けるというのは、恐ろしいことです。
完全な人間などいませんし、プロでも失敗することはあるでしょう。それに、物事には不測の事態はつきものですから、知識や能力に加えて、どんな事態にも対応できる柔軟性が必要で、さらには仕事の総体という「構造物」の屋台骨を支える覚悟がなければ務まりません。
そういう修羅場をいく度も踏んでいくうちに、責任を負うのを当然のこととして、どんな状況になっても立っていいられるようになっていくのではないでしょうか。そうやって仕事に磨かれ、自分に出来ることと出来ないことを悟るようになった人は、甘い幻想に逃げることをせずに、淡々と、自分が出来ることを成し遂げていけるのではないかと思うのです。
プロであるという自意識が過剰になり、己の物差しを過信してしまうとかえって視野が狭くなってしまうことがありますが、多くの経験をし、「過信の怖さ」を骨身に沁みて知っている人には静かな謙虚さがあって、私はそういう人に強い魅力を感じるのです(新潮文庫版『神の守り人 下 -帰還編-』319~320ページ)

著者の上橋さん自身、物語作りの プロフェッショナルだと思うが、プロフェッショナルが見たプロフェッショナルの姿といえよう。
このようなプロフェッショナルに一歩でも近づきたいものである。

このような「あとがき」は、やはり軽装版には書かれないだろう。結局、軽装版と文庫版の2種類の「守り人&旅人シリーズ」を揃えることになりそうだ。

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2009年6月30日 (火)

茂木健一郎著『セレンディピティの時代』を読み終わり、上橋菜穂子著『獣の奏者』を読み始める

数日前に紹介した『クラウドソーシング』を読み終わったあとは、ちょっと趣向を変え講談社文庫の2009年6月の新刊『セレンディピティの時代』(茂木健一郎著)を読んだ。「月刊KING」という雑誌の連載記事に手をいれて、新たな章も加え、文庫化したものだ。サブタイトルが「偶然の幸運に出会う方法」。『会社に人生を預けるな』に続いて読んだ勝間本の『起きていることはすべて正しい』にも「セレンディピティ」という言葉が使われていた。自分で行動し、何かに出会い、そのことに気づき、その結果を受け入れていくことが、幸運をつかむきっかけになるというもの。作者は、何かの出会ったことに気づく「心の余裕が必要」と語っている。

セレンディピティの時代―偶然の幸運に出会う方法 (講談社文庫)

このブログを書き始めた頃取り上げた、河合隼雄著『大人になることのむずかしさ』の中の一節「深い必然性をもったものほど、人間の目には一見偶然に見えるといってもよく、そのような偶然を生かしてゆく心の余裕をもつことが、(中略)必要であろう。」とも通じる部分があり、興味深かった。

獣の奏者〈1〉 (講談社青い鳥文庫)

『セレンディピティの時代』のあとは、久しぶりに上橋菜穂子ファンタジー『獣の奏者』を読み始めた。もともと2年ほど前ハードカバー上下2冊で出版され、NHKでアニメ化もされた人気作。通勤電車で読むには分厚く重たいので、文庫化されるのを待っていたら、講談社青い鳥文庫で上下2冊を4冊に分けて文庫化された。4冊が出揃ったところでまとめて買い、第1巻だけずっと鞄に入れていたが、いよいよ、今日から読み始めた。
さっそく、上橋ワールドに引きこまれ、第1巻の半分ほど読んだ。しばらくは、楽しめるだろう。

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2008年12月25日 (木)

上橋菜穂子著『天と地の守り人第三部』を読む

軽装版で読み続けてきた上橋菜穂子「守り人&旅人」シリーズ。先日、シリーズ9作目に当たる『天と地の守り人 第二部 カンバル王国編』を読み終わり、残るは1冊だけとなり、これまでの例にならえば軽装版の第10作の出版を待つところだが、結末を早く知りたいので、地元の図書館で単行本で『天と地の守り人 第三部』(新ヨゴ皇国編)を借りてきた。

天と地の守り人〈第3部〉 (偕成社ワンダーランド)

今日、田舎から連れてきた母親を病院に連れて行くために仕事を休んだので、病院で待っている間、一気に読み上げた。

前々作で、このシリーズを主役の2人、女用心棒のバルサと新ヨゴ皇国の皇太子チャグムがロタ王国で再会、前作では2人でバルサの故郷カンバル王国に向かう。カンバル王国で、南の大国タルシュ帝国に狙われ危機にある新ヨゴ皇国を救うため、チャグムはカンバル王からとロタ王国の同盟の約束を取り付ける。
前作の最後で、バルサとチャグムの2人は分かれ、バルサは新ヨゴ皇国に向かい、チャグムは同盟を実現するため、ロタ王国に戻る。

本作では、新ヨゴ皇国に戻ったバルサ、ロタ王国で同盟を成し遂げたチャグムの新ヨゴ皇国への凱旋という2つの軸で話が進む。ロタとカンバルの援軍を率いて新ヨゴの王宮に戻ったチャグムを巡る宮殿内での人間模様、幼なじみのタンダを探すバルサ。2人のどちらが、本作の主役かといえばチャグムであろう。父である王から疎まれたチャグムが苦難の旅の末、故郷に凱旋したチャグムの運命の行く末が本作の最大の見所だろう。

10冊にわたった「守り人&旅人」シリーズがこれで終わり、もう読むものがないというのが何とも寂しい限りだ。

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2008年11月30日 (日)

守り人&旅人シリーズ第9弾、上橋菜穂子著『天と地の守り人第二部』軽装版発売

先週金曜日(2008年11月28日)に、いつも会社の帰りに立ち寄る書店に寄り、児童文学のコーナーに行くと、ようやく上橋菜穂子さんの守り人&旅人シリーズの軽装版の9冊目『天と地の守り人第二部』が並んでいた。もちろん、さっそく購入。


前作で、ロタ王国で新ヨゴ皇国の皇太子チャグムと女用心棒のバルサが再会、バルサの故郷であるカンバル王国へ向かうところで終わる。
そして、今回はそのカンバルでの物語である。

まだ、解説と最初の数ページしか読んでいないが、今週の通勤電車では退屈せずに時間が過ごせそうである。

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2008年10月 4日 (土)

守り人&旅人シリーズ第8作『天と地の守り人 第一部』(上橋菜穂子著)を読み終わる

10月に入り、上橋菜穂子さんの「守り人&旅人」シリーズの最後を締めくくる『天と地の守り人』三部作の第一部ロタ王国編が軽装版で登場した。

『精霊の守り人』から始まった守り人&旅人シリーズの面白さにすっかりはまってしまい、第1作の『精霊の守り人』を新潮文庫で読んで以来、文庫が待ちきれず、それより速く出版される偕成社の軽装版が出版されたところですぐ買って読み継いできた。

女用心棒バルサと彼女に助けられた新ヨゴ皇国の皇太子チャグムの物語も歴史大河小説の趣を醸し出している。これまでの物語の中で、新ヨゴ皇国の周辺のカンバル王国、サンガル王国、ロタ王国、タルシュ帝国の歴史や内情が語られてきた。そして、各国を巡る国際政治情勢が2人の運命を翻弄していく。

前作『蒼路の旅人』で海を隔てた南の強国タルシュ帝国に捕虜として捕らわれ、その野望を知った新ヨゴ皇国の皇太子チャグムは、タルシュ帝国から新ヨゴ皇国に送り返される途上、ある思いを抱いて船から海に身を投げ、行方知れずとなる。
本作『天と地の守り人 第一部』では、チャグムはタルシュ帝国の捕虜になる前に戦死したことになっており、新ヨゴ皇国ではすでに葬儀も行われている。
女用心棒バルサは、彼女あてに託された手紙を受け取り、チャグムが死んでいないことを知り、チャグムを探すため、ロタ王国に向かう。
チャグム探しの旅の中で、バルサにもチャグムを取り巻く複雑な国と国との駆け引き、国の中での主導権争いなどが少しずつ明らかになっていく。
バルサはチャグムを探し出すことができるのか…?

いつもながら読み始めると、ぐいぐいと物語の世界に引き込まれ、ほとんど1日で読み終わってしまった。この物語もあと2冊、読みおわってしまうのが、もったいないような、でもはやくどういう結末になるのか知りたいような、読者としては複雑な心境である。

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2008年7月 1日 (火)

上橋菜穂子著『蒼路の旅人』を読み終わる

上橋菜穂子著「守り人&旅人シリーズ」の第7巻『蒼路の旅人』を先週末に、家の近所の書店で見つける。旅人シリーズは、かつて女用心棒バルサに命を助けられた新ヨゴ皇国の皇太子チャグムが主人公の物語である。

蒼路の旅人 (偕成社ポッシュ 軽装版)

チャグムも15歳を迎え、皇太子として国の重要な会議にも関わるようになってくる。皇太子としてチャグムの人気が出てくる一方、弟トゥグムも生まれ、帝である父からは疎んじられ、国の上層部では、チャグム派とトゥグム派に分かれて、派閥争いの兆しも見え始める。
かつてチャグムが外交使節として訪ねた(『虚空の旅人』)隣国サンガル王国は、海を隔てた南方のタルシュ帝国に攻められ戦争が始まっている。
今回の『蒼路の旅人』は、そのサンガルの王から新ヨゴ王国に援軍を求める書簡が届くところから、物語が始まる。
対応策を協議する御前会議で思わず父である帝に意見するチャグム。チャグムの母方の祖父で、宮廷でのチャグムの支援者であるトーサ海軍大提督とともに、援軍として送られることになった船団に加わることを帝から命じられてしまう。

援軍の依頼そのものが、すでにタルシュ帝国に寝返ったサンガル王国の罠かも知れないと懸念される中、祖父トーサ提督とともにサンガルに向けて出航するチャグム。
船には、チャグムの護衛という名目で乗船しているものの、何か事が起きれば、帝からチャグムの暗殺を命じられているに違いない「王の盾」の2人もいる。
チャグムは死を覚悟して旅に出るが、そこには彼自身が思いもしなかった、困難が待ち受けていた…。

本作は、いずれは帝となり国を預からなければならない皇太子チャグムの自らの宿命をどう受け止めるかという物語であり、少年が大人へと成長していく物語でもある。軽装版の解説を書いた著者と同い年の作家佐藤多佳子は、「シリーズ十巻の中では、私は、この『蒼路の旅人』が一番好きだ。(中略)最大の魅力は、やはり、皇子チャグムが繊細な少年から、もがき苦しんで脱皮して、心身ともに強靱な若者にかわりつつある、その課程のみずみずしさだ。チャグムは、シリーズ全編にわたって、大きな困難に立ち向かい、ぎりぎりのところで打ち勝っては成長していくことを運命づけられている登場人物だが、その変化がいちばん鮮やかで印象に残るのが、この『蒼路の旅人』である。」(『蒼路の旅人』軽装版385ページ)と述べている。
私はまだシリーズ7冊しか読んでいないが、まさにこの解説の通りだと思う。繊細な少年から強靱な若者への成長譚と言えば、ゲド戦記の第1巻『影との戦い』にも通じるものがあるし、また陸上競技を舞台の一人の少年の成長を描いた佐藤作品『一瞬の風になれ』とも、ファンタジーとスポーツ小説という舞台の違いはあれ、深いところでは共鳴しているように思う。

読み始める前の期待を裏切らない、いや期待以上の作品であった。

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2008年2月14日 (木)

上橋菜穂子著『神の守り人(上)来訪編』、『神の守り人(下)期帰還編』を読み終わる

上橋菜穂子著『神の守り人(上)来訪編』、『神の守り人(下)期帰還編』の2冊をようやく読み終わった。いつもながら、この作者の物語を作る力量には驚かされる。

神の守り人 上 来訪編  (偕成社ポッシュ 軽装版)

神の守り人 下 帰還編 (偕成社ポッシュ 軽装版)

著者の「守り人&旅人」シリーズの5冊め、6冊目となる今回の主人公はシリーズの主役女用心棒のバルサ、そしてバルサに寄り添う幼なじみの呪術師タンダ。

恐ろしい出来事で母を亡くしたロタ王国の少女アスラとその兄チキサの2人はだまされて、新ヨゴ皇国の人身売買の組織に売られそうになるが、アスラの持つ不思議な力で難を逃れる。しかし、人買い商人とは別に、ロタ国から2人を追ってきた者たちがいる。たまたま、宿で2人と一緒になったバルサとタンダ。さらわれようとした2人を助けようとして、バルサとアスラは逃げだし、タンダとチキサは追っ手に捕らえられる…。

こうして、手に汗握る冒険譚が始まるが、今回はロタ王国の建国にまつわる言い伝え、ロタ王国の一触即発の政治状況、それらを背景にしたスケールの大きな謀(はかりごと)が巡らされている。読み進むうちに、少しずつ、そのからくりが明らかになっていく時のワクワク感は、「守り人&旅人」シリーズならではである。

さらに、今後のシリーズのストーリー展開の伏線として、前作の『虚空に旅人』でも登場した海の南のタルシュ帝国の存在感も語られている。
また、作中、ロタ王国のヨーサムは、隣国サンガル王国の新王即位の儀式に呼ばれて国を弟のイーハンに託して旅立ち、国を留守にするが、これは前作『虚空の旅人』で新ヨゴの皇太子チャグムが呼ばれた式典と同じ式典のはずだ。

次の『蒼路の旅人』が待ち遠しい。

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2008年2月 4日 (月)

上橋菜穂子著「守り人&旅人」シリーズ、軽装版第5弾・『神の守り人(上)来訪編』、第6弾『神の守り人(下)期帰還編』ようやく登場

最近、書店に行くたびに、必ず児童書のコーナーに立ち寄っていた。上橋菜穂子さんの「守り人&旅人」シリーズの軽装版の新刊がそろそろ出てもいい頃だと昨年の年末から注意して見ていたのだが、なかなか昨年9月に出た第4弾『虚空の旅人』に続く『神の守り人』は出ない。
軽装版の後を追う形で出されている新潮文庫の方は、年末の第3弾『夢の守り人』が出版されている。

今日も、どうせまだ出ていないだろうと思いながらも、児童書コーナーに寄ってみると、『神の守り人(上)来訪編』、『神の守り人(下)期帰還編』が平積みで並べてあった。「ようやくだな…」と思い、2冊を手にしてレジへ。

神の守り人 上 来訪編  (偕成社ポッシュ 軽装版)

神の守り人 下 帰還編  (偕成社ポッシュ 軽装版)

本の帯を見ると「待望の軽装版第五弾」「待望の軽装版第六弾」とある。「いやあ~、本当に待たされましたよ」と言いたくなる。

まだ、買っただけで読み始めてはいないが、カバーの見返しのところを読むと、今回の舞台は、主人公である女用心棒バルサが本拠にする新ヨゴ皇国に隣接するロタ王国が舞台になるようだ。巻を追う毎に、新ヨゴ皇国の周りの国々が順に登場し、上橋ワールドの詳細が少しづつ明らかになっていく。楽しみである。

昨年、NHKBSで放送された『精霊の守り人』のアニメーションが、この4月から地上派でも放送されるらしい。こちらも、楽しみである。

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2007年10月17日 (水)

上橋菜穂子著『虚空の旅人』軽装版を読み終わる

一昨日、たまたま寄ったある書店で、何気なく児童書のコーナーをのぞいて見ると、上橋菜穂子さんの守り人・旅人シリーズの第4作にあたる『虚空の旅人』の軽装版が書棚に並んでいた。まだ、軽装版が出るのは先だろうと思っていたので、すぐ手に取り購入。奥書を見ると、2007年9月初版第1刷と書かれている。
私が減量に一生懸命になっている間に発行されていた。

虚空の旅人 (偕成社ポッシュ 軽装版)

これまでの『精霊の守り人』『闇の守り人』『夢の守り人』では、女用心棒のバルサが主人公だったが、本編『虚空の旅人』では、第1作『精霊の守り人』でバルサに命を助けられ、後に新ヨゴ皇国の皇太子となった少年チャグムが主人公である。バルサが主人公として活躍するメインストリーである『守り人』シリーズの外伝として書かれたものである。

本作では、新ヨゴ国の南に位置し南の海に突き出す半島にある隣国サンガル王国の新王即位の儀式に新ヨゴ皇国を代表して、皇太子チャグムが送られる。お供は、チャグムの学問の師でもある若き星読博士のシュガと数名の衛士だけだ。

新王即位のおめでたい儀式を控え、サンガル王国に属するカルシュ島では、「ナユーグル・ライタの目」という異界からの使いが現れる。

一方、サンガル王国から海を隔ててさらに南方にあるタルシュ帝国では、ある計画がめぐらされていた。

さまざまな人の運命が、クライマックスに向けて凝縮していく様を、描きだす筆者の筆はこれまで通り健在である。メインストリーの主人公であるバルサはチャグムの思い出の中でしか登場しない。代わりに、バルサの弟子ともいえるチャグムが、時には心優しい少年として、時には皇太子として国を代表して外交上の交渉を行ったりと活躍する。
バルサの登場するメインストーリーと切り離して、この作品だけを、一人の少年皇太子の冒険物語として読んでも十分楽しめる作品である。

守り人・旅人シリーズ全10冊を、2か月に1冊のペースで軽装版化してくれるのであれば、次は11月。第5作『神の守り人 来訪編』も早く読みたいものである。

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2007年7月13日 (金)

上橋菜穂子著『夢の守り人』を読み終わる

昨日から読み始めた上橋菜穂子さんの守り人シリーズ第3作『夢の守り人』を読み終わった。

夢の守り人 (偕成社ポッシュ 軽装版)

守り人シリーズの舞台である新ヨゴ皇国では、深い眠りにおちたまま寝覚めない人が増えていく。
シリーズの主人公である女用心棒バルサの幼なじみの呪術師タンダの姪カヤ。第1作『精霊の守り人』で皇太子だった息子を亡くした国王の第一皇妃である「一ノ妃」。そして、第1作で、バルサやタンダと逃避行をし、兄の死で皇太子となったチャグム。

3人は、それぞれ放浪の歌い手ユグノの歌声に魅せられたことがあった。夢を集める異世界の<花>が、歌声に魅せられた人々の魂をとらえて離さない。
目覚めない姪のカヤを救おう、夢の<花>が咲く世界に一人乗り込んだタンダに、予想もしなかった事態が待ち受けていた…。

昨日、読んだ前半1/3は、言わば物語りの枠組みを説明した部分で、今日読んだ残り2/3で物語は一気に展開した。

今回の物語では、主に中心人物となるのは、呪術師タンダと、上のあらすじには登場しないが、タンダの師匠で老齢の女呪術師トロガイである。夢の<花>には、トロガイの過去が分かちがたく結びついている。
シリーズの主人公であるバルサもちゃんと登場するが、今回は脇を固める役回りだ。

人は誰しも、辛い現実に直面すると、こうあってほしいという夢の世界に逃避しがちである。しかし、逃避ばかりしていて、現実を見つめて、解決しようとしないとどうなるのか。そんなテーマも根底にはあるように思う。

ぐいぐいと読むものを引きつける話の展開は、いつもながら大したものだ。新ヨゴ皇国の皇太子チャグムが主人公となる第4作『虚空の旅人』の早く読みたいものだ。

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2007年7月12日 (木)

守り人シリーズ第3作『夢の守り人』(上橋菜穂子著)の軽装版登場

先日、守り人シリーズの第2作『闇の守人』が新潮文庫から発売され、思わず買ってしまったことを書いたが、昨日、書店で、第3作の『夢の守り人』の軽装版が新たに発売になっているのに遭遇。

夢の守り人 (偕成社ポッシュ 軽装版)

ハードカバーの児童書版を図書館で借りようと思いながら、まだ図書館に探しにも行けていなかったこともあり、さっそく購入した。

版元の偕成社と文庫を出す新潮社との間で、偕成社が先に軽装版を出し、半年ほどしてから新潮社が文庫化するという申し合わせでもあるのかも知れない。この調子で、全10作が文庫化されるまで待っていたら、まだ5年くらいはかかりそうである。せめて偕成社で全10作の軽装版化を早く進めてもらい、大人にも読みやすくしてほしいものである。

今朝から読み始め、1/3ほど読んだが、感想は読み終わったところで、改めて書くことにしたい。

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2007年6月 5日 (火)

上橋菜穂子著『闇の守り人』を読み終わる

昨日のブログに書いた『精霊の守り人』に続く、『闇の守り人』(上橋菜穂子著)を読み終わった。昨日も書いた通り、まだ文庫化されていないので、今回読んだのは、偕成社の軽装版である。

闇の守り人 (軽装版偕成社ポッシュ)

前作『精霊の守り人』に勝るとも劣らない出来映えで、読み始めると一気に引き込まれる。

前作『精霊の守り人』での、新ヨゴ皇国の皇子チャグムを守る旅を終えた女用心棒のバルサは、新ヨゴ皇国の北にあるカンバル王国の出身だ。
カンバル王国のナグル王の主治医だった父カルナは、王の弟ログサムが企てた兄ナグルの暗殺に心ならずも加担することになる。しかし、いずれ自分もログサムに殺されることを察知していたカルナは、自分の幼い娘バルサの命だけは助けたいと、親友でカンバル国一の武人で短槍の使い手であるジグロに娘を託す。
ジグロは、バルサを連れて逃亡の旅に出る。カンバル国から次々と送り込まれる刺客。ジグロは、自分たちの刺客として送り込まれたかつての盟友8人を倒し、バルサを育てながら旅を続けるが最後は病に倒れる。
ジグロから短槍を仕込まれたバルサは、養父ジグロが8人の仲間を殺した罪を償うため、8人の命を守るという誓いをたてて旅を続けるが、30才の時、『精霊の守り人』の事件に遭遇する。
生まれ故郷であるカンバル王国では、父カナルに兄である前王を殺させ、王位を奪い、バルサの父をを殺したログサムが亡くなり、バルサが命を狙われる理由もなくなった。前作は、バルサがカンバルに旅立つところで終わる。

カンバルに向かう際に、バルサは両国を隔てる青霧山脈の青霧峠越えをせず、25年前養父ジグロがバルサを連れて逃亡する時に通った、迷路のような洞窟を通ってカンバルに戻ろうとする。
そこで、子どもの悲鳴を聞き駆けつけるバルサ。幼い兄と妹がヒョウル「闇の守り人」に襲われていた。短槍を取り出し、子どもを助けるバルサ、ヒョウルはまるで自分に短槍を教えたジグロのような短槍使いだった。

洞窟でヒョウル「闇の守り人」したバルサは、助けた2人の子どもを連れカンバル王国に入る。そこで耳にした裏切り者ジグロの話は、真実とはかけ離れた内容だった。そして、自分が逃亡せざるをえなくなったログサムによる王位簒奪事件の背景には、さらに深い陰謀が隠されていた…。

この『闇の守り人』は、心ならずも女用心棒として生きることになり、胸中に深い恨みを抱くバルサが、自分の運命とどう向き合い、それをどう受け入れ、折り合いをつけていくのかという物語だ。作者によるあとがきでは、シリーズの中で大人の読者から最も支持されているのが、この『闇の守り人』だそうだ。(一方、子どもの人気が高いのは『精霊の守り人』とのこと)

バルサほど過酷な運命ではなくとも、我々は大なり小なり、自分ではどうしようもない定めのようなものに巻き込まれてしまうことがある。しかし、それを嘆いてばかりいてもはじまらない。

作者上橋菜穂子さんはあとがきで次のように書いている。

大人の読者が『闇の守り人』を愛する理由として、バルサの心の葛藤とその結末をあげてくださっているように、それぞれの人生の<時>のなかで、心に響くものはちがうのでしょう。
(偕成社軽装版ポッシュ『闇の守り人』369ページ)

「ファンタジーなんて…」と言わずに、大人に読んでほしい作品だ。

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2007年6月 4日 (月)

上橋菜穂子著『精霊の守り人』を読み終わる

『狐笛のかなた』に続き、新潮文庫から4月に発売されたばかりの上橋菜穂子さんの『精霊の守り人』を読んだ。

精霊の守り人 (新潮文庫 う 18-2)

この作品はNHK-BS2でテレビアニメ化され、2007年4月から放送が開始されているということで、新潮文庫の他、書店の児童書のコーナーでも偕成社の守り人・旅人シリーズ全10作のハードカバーの単行本、2冊の軽装版などを揃えてキャンペーンが行われている。

内容はいわゆる異世界ファンタジーで、物語の舞台である新ヨゴ国を通りかかった女用心棒のバルサが、川に落ちた第二皇子チャグムを助けたところから物語は始まる。
ある理由から命を狙われているらしいチャグムを助けるため、チャグムの母である二ノ妃からチャグムを連れて逃げるように頼まれるバルサ。
バルサとチャグムの逃避行が始まるが、追っ手もすぐ後ろに迫っている。しかし、チャグムが本当に逃れなければならない相手は、追っ手でなく、もっととてつもなく恐ろしい相手だった…。

手に汗握る物語で、話の展開とともに少しずつ歴史の真実と恐るべき敵の姿が明らかになっていく。

作者の上橋菜穂子さんは「文庫版あとがき」で次のように語る。

大人の読者の中には、「なぜ児童文学として書いたのですか?」という質問をされる方が、よくいらっしゃいます。(中略)その答えは、「子どもが読んでも、大人が読んでも面白い物語が書きたい」からなのです。(中略)
ある意味、とても素朴で、古くから人々が語ってきた「語り物」の骨格を持つがゆえに、子どもでも楽しめる物語。それでいて、大人が読んだときには、大人であるがゆえの発見があって楽しめる物語-そういうものを書きたいと願い、私はいまも、その夢を追いかけています。
(新潮文庫版『精霊の守り人』344~346ページ)

作者は、単なる子ども向けの児童文学としてこの作品を書いたわけではなく、大人にも通用するレベルを意識して書いたということであり、読み応えがある。

一方、皇子チャグムにスポットを当ててみると、高貴な血筋な者が不運な境遇に見舞われながらも、さすらいの旅の中で数々の危機を乗り越えて成長していくという、昔話やファンタジーの一つの類型である「貴種流離譚にもなっている。

バルサとチャグムを軸にした、このシリーズは10冊に及ぶ。文庫化されたのは、この『精霊の守り人』1冊だけ。
第2巻にあたる『闇の守り人』は偕成社の軽装版を買ったが、この軽装版もまだ『精霊の守り人』と『闇の守り人』しか出ていない。さすがに、児童書として出されたハードカバーを買うのは、我が家の収納スペースの関係からちと辛い。
はて、どうやって残り8冊を読もうか、物語の展開とはまったく関係のないところで、頭を悩ませている。

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2007年6月 1日 (金)

上橋菜穂子著『狐笛のかなた』を読み終わる

佐藤多佳子さんの作品が一段落したので、ファンタジー作家として、最近にわかに注目を浴びている上橋菜穂子さんの作品を読み始めた。最初に手にしたのは新潮文庫の『狐笛のかなた』。

狐笛のかなた (新潮文庫)

日本の室町時代あたりを下敷きにしたと想われる時代ものファンタジーである。
主人公の少女小夜は、森の中で傷ついた一匹の小狐を助ける。そして、森の中の小屋に閉じ込められている小春丸という少年と会う。

全ての謎を暗示する小夜の少女時代から説き起こされた話は、成長し乙女となった小夜に続いていく。不思議な力を持つ小夜は、それ故に事件に巻き込まれていく。

作者の上橋菜穂子さんは、佐藤多佳子さんと同じ1962生まれ。この年は児童文学の当たり年のようだ。
もう少し上橋作品を読んでみようと思う。

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