2010年8月19日 (木)

池上彰著『<わかりやすさ>の勉強法』(講談社現代新書)から、「わかりやすい説明」と「自己流の編集」について

ここ数日、小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクト関連の本を夢中になって読む前に、池上彰著『<わかりやすさ>の勉強法』(講談社現代新書)を読んだ。

<わかりやすさ>の勉強法 (講談社現代新書)
<わかりやすさ>の勉強法 (講談社現代新書)

池上彰は、NHKの週刊こどもニュースの初代おとうさん役として名が売れ、今や、子どもだけでなく、大人に対しても、政治・経済・国際問題等の難しいニュースを最もわかりやすく説明してくれる解説者と言えるだろう。

インターネットから何かと情報を集めてくる長女は、「このあいだの参議院選挙の解説番組では、テレビ東京の池上さんがおもしろい、わかりやすいって評判だよ」と語っていた。
インターネット検索でいろいろと調べて見ると、昨年夏の衆議院選挙の際の関東地区でのテレビ東京の視聴率は2.4%で 在京6局中ダントツの最下位だったが、今回はNHK18.8%、日本テレビ9.7%に次ぎテレビ東京が9.3%でなんと3位。以下TBS9.2%、テレビ朝日9.1%、フジテレビ8.2%の順だったそうだ。
わかりやすい解説に加え、今回は、政党の幹部や当選した議員への、歯に衣着せぬ本音での鋭い質問(ツッコミ)が話題になっていた。

その長女や妻が、改めて政治や経済を勉強するのに池上本を読むと言い始め、我が家は今ちょっとした池上彰ブームになっている。
ブームの中で買った1冊が講談社現代新書の2010年6月の新刊『<わかりやすさ>の勉強法』。

勉強法や、情報収集と情報の整理等で読んでいろいろと得るところがあったが、特に印象に残った点を二つ紹介しておきたい。

まず、まえがきにあたる「はじめに」のところで、どんなときに人は「ああ、そうだったんだ!」と思うかという「わかりやすい説明」を説明した部分である。

「自分の中に以前から存在していた断片的な知識がひとつにつながったとき。
断片的な知識が、あるルールのもとにきれいにならべられたとき。
断片的な知識が、いくつかのグループに分けられたとき。
こんなときに、「そうか、わかったぞ!」と叫びたくなるのではないでしょうか。」
(『<わかりやすさ>の勉強法』3ページ)

日本は中学卒業までの9年間は義務教育。多くの人は高校も卒業している。池上キャスターに解説してもらうテーマは、主に、政治・経済・国際問題なので、聞き手の側も小学校の社会科、中学校の公民(今も公民と呼ばれているかはわからないが)、地理、歴史、高校でも現代社会や政治・経済、地理、人によってはさらに日本史・世界史など学んでいるはずなのだ。それぞれに、得意不得意はあったにせよ、断片的な知識は皆持っている。
それを、思い出してもらい、うまくグルーピングしたり、つなげてみせるというのが、池上マジックのキモということなのだろう。

もうひとつは「自己流の編集」の説明の部分だ。

「多様な事実の中から自分なりにいくつかの事実を選んできて自分なりに並べる。それが、「自己流の編集」だと思います。
雑多な事実の中から何を選ぶか、選んだ事実をどう並べるか、選ぶ力と並べる力、その二つが言ってみれば「編集力」なのです。(中略)
どのように並べるかというところで、また編集力が問われます。(中略)自分なりの並べ方をする。そこから「どんな説明をしようか」と自分なりの論理を考えていくのです。(中略)
出来事を自己流に解釈して並べる力、あるいは「解釈した結果、こう伝える」と伝わるかたちに並べ直す力、それが編集力の第二段階です。」
(『<わかりやすさ>の勉強法』3ページ)

以前、著者がNHKに記者として入社し、各地で記者経験を積んだ後、首都圏ニュース845のキャスターとなり、そこから週刊こどもニュースのキャスター(お父さん役)へとさらに転身し、NHKを退社するまでを綴った本を読んだことがあるが、さらにその後、民放で自身のレギュラー番組や他の番組にゲスト出演する中で、見聞を広め、そこで新しく得たものが、新しい本には反映されているように思う。

著者は「あとがき」にあたる巻末の「勉強って何だろうー「おわりに」に代えて」で次のように語る。

「勉強するということは、知識欲を満たす純粋な楽しさと同時に、自分が成長しているという実感を与えてくれます。それは年齢に関係ありません。50歳でも、60になっても、70になっても、前の日よりも自分が成長していることが実感できる喜び、それが実は、勉強ではないかと、最近私は思っています。」
(『<わかりやすさ>の勉強法』219ページ)

「勉強法」という点で学ぶべき点が多いのはもちろんだが、行間から池上彰の人となりがにじみ出る本だと思う。

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年1月23日 (火)

河合隼雄文化庁長官、退任

今朝の朝日新聞に河合隼雄文化庁長官が任期満了で退任するとの記事が出ていた(その後記事を再確認したところ、1月17日に任期が満了に退任したとの記事の内容だった)。昨年8月に脳梗塞で倒れてからもう少しで半年になる。

記事は、河合隼雄長官が、初代の今日出海、三浦朱門に次ぐ3人目の文化人出身の長官であること、奇しくも3人の就任か17年毎であることなどには触れられているものの、脳梗塞で倒れたことには一切触れておらず、河合ファンが最も知りたいその後の容態についても何のコメントもなかった。(インターネットのニュースを検索したところ、病気療養中の状態には変化はない模様だ)

折しも、今日は世界遺産への推薦候補が、文化庁から発表され文化庁が注目を集めた一日だった。
富士山、富岡製糸場、長崎の教会群、飛鳥・藤原の歴史遺産の4つが候補に残ったとのこと。

昨年秋には、文部官僚から後任の文化庁長官が選任され、行政上は既に過去の人だが、河合隼雄長官なら、この4案件の候補選定について、どうコメントしたか、聞いてみたいと思うのは私だけではないだろう。

お元気になられることを祈るばかりである。

追記:本日の記事は出張先の大阪のホテルから携帯電話で投稿しています。事実誤認等があれば、後日修正します。

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年12月21日 (木)

2007年3月、PASMOスタート、Suicaと相互利用も

首都圏の地下鉄・私鉄で相互利用可能なパスネットを運用している各社で、来年2007年3月18日(日)から、JR東日本が導入している「Suica」と同じ非接触ICチップFeliCaの技術を利用したICカード乗車券「PASMO」(パスモ)が導入されることについて、正式発表があった。併せて、「Suica」との相互乗り入れも同時に実施するとのことで、来春からは、、「Suica」か「PASMO」のどちらかを持っていて、事前に券売機等で金額をチャージしておけば、首都圏の鉄道ネットワークは、1枚のカードで自由に乗り降りができるようになる。「PASMO」は「Suica」同様電子マネーとしても利用可能で、電子マネーとしても「Suica」と相互乗り入れをするとのことで、「PASMO」=私鉄版「Suica」といえる。

これまでは、鉄道での移動の際には、財布に「Suica」とパスネットを両方入れ、乗る線によって使い分けをしていたが、その手間が省けるようになる。

すでに、「Suica」とクレジットカード、銀行のキャシュカードが一体化した物もあり、そのうちプラスチックカード1枚あれば、大概の用事は片付くようになるだろう。あるいは、それがカードでなく携帯電話になる可能性もあり、しばらくはこの小口決済マーケットから目が離せない。

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年11月 1日 (水)

河合隼雄文化庁長官、休職

昨日(10月31日)の朝日新聞の夕刊で

政府は、31日、病気療養中の河合隼雄文化庁長官の後任に近藤信司文部科学審議官をあてる人事を閣議決定した、11月1日付けで発令し、河合長官は同日付けで休職(中略)。
河合長官は(中略)、今年8月、奈良県の自宅で脳梗塞で倒れ、入院を続けている。

とニュースが伝えられていた。改めて、インターネットで他社のニュースも検索してみると、

日経(NIKKEI NET)では
「病気休職中の河合隼雄文化庁長官は定員外となるが、長官職にはとどまる。」とあり、

読売(YOMIURI ONLINE)では
「当面は休職扱いとすることにした。河合氏の任期は来年1月17日まで。」と伝えている。

さらに読売では

伊吹文部科学相は31日の記者会見で、交代の理由を、「長官の健康がなかなか回復せず、11月に文化庁で多くの行事もあるためだ」と説明した。

との文部科学大臣のコメントも伝えている。

本人に意識があって、当面、職務復帰不可能ということであれば、その時点で自発的に辞職ということになるのだろうが、倒れた途端意識不明なので、文部科学省としても、一方的に職を解くというわけにもいかず、任期満了までは、定員外という形で長官職に留まるということになったのだろう。

いずれにしても、容態に変化はなく、病状は回復していないということだろう。ただただ、健康を回復されることを祈るばかりである。

*河合隼雄関連の記事
3月7日:『中年クライシス』
8月24日:気がかりな河合隼雄文化庁長官の容態
9月1日:『明恵 夢を生きる』を読み始める
9月5日:気がかりな河合隼雄文化庁長官の容態・その2
9月7日:『明恵 夢を生きる』を読み終わる
9月8日:90年代後半の世相を語る『縦糸横糸』を読む

11月1日:河合隼雄文化庁長官、休職  

| | | コメント (1) | トラックバック (1)

2006年10月27日 (金)

日本ハムファイターズ、日本シリーズも札幌で胴上げ

日本ハムファイターズが、札幌ドームで中日ドラゴンズに3連勝し、私が応援する福岡ソフトバンクホークスを破ったパ・リーグのプレーオフに続き、本拠地札幌で胴上げを実現した。

初戦こそ、中日のエース川上憲伸に破れたものの、第2戦を八木で取り返したあと、札幌に戻ってからは、球場全体がファイターズのファンで埋め尽くされる中、まさに我が家に帰った感じで伸び伸びとプレーし、今日の第5戦も1点リードされていたものの、見ていて負けるようには見えなかった。

セギノールの2ランホームランで逆転した後、8回裏には、稲葉が中日の息の根を止めるダメ押しの2ランホームラン。試合は、ほぼここで決まった感じで、あとは、現役最後の試合となる新庄の引退セレモニーであった。打席の入り、涙流す新庄。さらに、9回表のセンターの守備についても新庄の涙は止まらない。最終打者の打ったボールがレフトを守る森本のグラブに収まり、ゲームセット、日本一が決まった時、森本はセンターの新庄に駆け寄り抱き合っていた。そして、極めつけは、チームで最初に胴上げされたことだろう。

大リーグから戻り、北海道の日本ハムに入って3年。自らの宣言通り満員となった札幌ドームでの日本一を決めた日本シリーズ第5戦が現役最後の試合となり、そこで胴上げまでされるのだから、やはり大した選手だと思う。

我がひいきのソフトバンクホークスの王監督のオーラも、今年ばかりは新庄選手にかなわなかったと言うことだろう。
しかし、来年こそは、沢村賞投手となったエース斎藤和巳を中心にした強力な投手陣と出戻り小久保(多分)を加えた打撃陣で、福岡ソフトバンクホークスに優勝してもらいたい。

| | | コメント (0) | トラックバック (1)

2006年9月 5日 (火)

気がかりな河合隼雄文化庁長官の容態・その2

今朝の日本経済新聞に脳梗塞で倒れ入院中の河合隼雄文化庁長官の主治医が4日(昨日)、河合長官の容態につき発表したとの記事が出ていた。
「小康状態を保ち、生命の危機的状況はほぼ脱した」とのコメントの一方、依然として「意識は回復しておらず重篤な状態」とある。

昨日は、小坂憲次文部科学大臣が高松塚古墳の視察し、河合長官の家族に面会したこともあり、容態の発表があっったのかも知れない。

まだ、意識不明ということだ。この世とあの世との境で、さまよっているということだろうか。

河合長官の最近の本に『大人の友情』(朝日新聞社、2005年)がある。

大人の友情
大人の友情

その中に、白洲正子さんから聞いた話がのっている。

 白洲さんが晩年病気で瀕死の状態になられた。親族一同が危篤と思って見守る中で、白洲さんは「大丈夫、大丈夫」と言われたらしい。一同、変な気がしたが、幸いにも奇跡的に治って元気になった。
 その後、お会いしたら、「私、死にかけたのよ」と話をして下さった。ふと気がつくと自分は一人で山道を歩いていた。ところが、桜の花が満開で、それが散りはじめ、その花吹雪のなかを、これなら一人でゆける、というので「大丈夫、大丈夫」と言ったらしい。そのとき、このようにして一人でちゃんとあちらにゆけるのだから大丈夫という気があったようだ。このような話であった。
 この話に私は深く心を打たれたし、さすがに白洲さんらしいなと感じた。
(河合隼雄著『大人の友情』朝日新聞社、85~86ページ)

ぜひ、ここで語られている白洲正子さんのように意識を回復し、あの世の入り口の話でも、我々に笑い飛ばすように語ってほしいものだ。

(追記:その後、『大人の友情』は2008年2月に朝日文庫に入った)

大人の友情 (朝日文庫 か 23-8)
大人の友情 (朝日文庫 か 23-8)

*河合隼雄関連の記事
3月7日:『中年クライシス』
8月24日:気がかりな河合隼雄文化庁長官の容態
9月1日:『明恵 夢を生きる』を読み始める
9月5日:気がかりな河合隼雄文化庁長官の容態・その2
9月7日:『明恵 夢を生きる』を読み終わる
9月8日:90年代後半の世相を語る『縦糸横糸』を読む

11月1日:河合隼雄文化庁長官、休職

| | | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年9月 1日 (金)

『明恵 夢を生きる』を読み始める

河合隼雄文化庁長官のその後の容態はどうなっているのだろうか?特に、新しいニュースもないようである。

私は、河合長官の著書は、かなり読んでいるが、このほぼ20年積ん読になったままの著書がある。『明恵 夢を生きる』(京都松柏社発行)である。奥書を見ると、1987年4月発行で、私の手元にあるのは、1987年7月第3刷である。ほぼそのタイミングで購入しているはずだ。それから、19年が過ぎ20年目に入る。それ以後、新刊で出た著書もずいぶん読んでいるが、なぜかこの本は何度か手に取るが、挫折してしまう。

鎌倉時代の高僧明恵(みょうえ)は、自らの夢を綴った『夢記』を生涯を通して記しており、それを河合隼雄氏が心理学者、夢分析者の立場から語るもので、非常に興味深いテーマなのだが、なぜか進まない。

どちらかと言えば心理学の専門書的な位置づけで出されたこの著書は、その後、広く読まれ、1995年には「講談社+α文庫」の河合作品の1冊に加えられている。思い切って、そちらを買って読むことにした。文庫版のまえがきには、「文庫版出版にあたりふりがなをふやすことになり、…」とある。単行本の方を、なかなか読み進めなかったのは、ふりがなが少なくページ全体から堅い印象を感じていたからかも知れない。今度こそは、読み終わろう。

明恵 夢を生きる (講談社プラスアルファ文庫)
明恵 夢を生きる (講談社プラスアルファ文庫)

*河合隼雄関連の記事
3月7日:『中年クライシス』
8月24日:気がかりな河合隼雄文化庁長官の容態
9月1日:『明恵 夢を生きる』を読み始める
9月5日:気がかりな河合隼雄文化庁長官の容態・その2
9月7日:『明恵 夢を生きる』を読み終わる
9月8日:90年代後半の世相を語る『縦糸横糸』を読む

11月1日:河合隼雄文化庁長官、休職

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年8月31日 (木)

停電と地震

先日、東京では大停電があったばかりだが、今日また、通勤途中で停電に遭遇した。地下鉄で職場の最寄り駅まであと2駅というところで、停電で停車とのアナウンス。時計を見ると8時10分。待っていても、いつ動き出すかわからないので、その駅でおり、まだ暑さの残る夏の朝、残りの距離を職場まで歩いた。25分ほど歩き、今回は始業5分前に着いた。

やれやれと思っていると、夕方になって今度は地震。最初、ゆらゆらと来て、次にグラッと来た。東京は震度3とのことらしい。

明日9月1日は、防災の日。1923(大正12)年には関東大震災が起きている。大震災など二度と起きて欲しくないが、まさかの時に備えて、一度、休日を使って、職場から自宅まで歩いてどれくらいかかるのか、シミュレーションをしておく必要があるかも知れない。

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年8月24日 (木)

気がかりな河合隼雄文化庁長官の容態

先週、8月17日(木)に河合隼雄文化庁長官が、奈良の自宅で脳梗塞で倒れたとのニュースが流れた。肺炎を併発し、重体。翌日には、小康状態との報道が続いたが、その後は、何も伝えられず、気がかりだ。

私は高校生の頃から心理学に興味があり、ずいぶん本も読んだが、一番多かったのは、河合長官の著作である。軽妙な語り口で、読むものを惹きつけてやまない。
河合氏は最初から心理学者を志していたわけではなく、京大の数学科を出て一時は高校の数学の教師をしている。その後、京大大学院で心理学を学び、米国留学の後、スイスのユング研究所で学んでいる。日本に戻り、京大で教鞭をとるかたわら、心理療法家として臨床治療も行い、その経験が著作の中にも反映されている。

私が、好きな本は何冊かあるが、特に、印象に残っているものに、『大人になることのむずかしさ』(河合隼雄著、岩波書店、1983年、1996年に新装版として再版)という著書がある。

大人になることのむずかしさ―青年期の問題 (子どもと教育)
大人になることのむずかしさ―青年期の問題 (子どもと教育)

これは、岩波の”子どもと教育を考える”というシリーズの1冊として出版された。教育書として出されたせいもあり、その後も、文庫化されたこともない地味な本であるが、私にはいつも読み返す一節がある。「職業の選択」という見出しの付いた一節である。

職業の選択や配偶者の選択においては、思いがけない偶然性が伴う時がある。職業や配偶者は、その人にとっての人生の一大事であるのに、偶然によって決めるなど、まったく馬鹿げているように思われるが、実際はその結果が上々であることも少なくないのである。(中略)
このことは、人生の不思議さといってしまえばそれまでだが、職業や配偶者の選択のような、あまりに重大なことになると、人間の意志や思考のみに頼っていては、あまりよい結果をもたらさないことを示しているのかも知れない。(中略)
深い必然性をもったものほど、人間の目には一見偶然に見えるといってもよく、そのような偶然を生かしてゆく心の余裕をもつことが、職業選択の場合にも必要であろう。もっとも、偶然を生かすことと、偶然に振り回されることは似て非なるものであることは、いうまでもないことである。一所懸命に行為してゆくにしろ、どこかに偶然がはいりこんでくるゆとりを残しておくことは、大人であるための条件のひとつといっていいだろう。
(河合隼雄著『大人になることのむずかしさ』岩波書店、168~169ページ)

「深い必然性をもったものほど、一見偶然に見える」との考えは、いつも、私の頭のどこかにある。いつも、「ただいま現在、こうしてあることの偶然を、どうやって次に生かしていけるだろうか?」と考えてきたように思う。
サラリーマンの仕事は、異動という自分の意志では、どうにもならないものによって左右される。新たな職場で、どんな仕事をし、社内外で誰と巡りあうかも、偶然の産物であろう。しかし、これまで、偶然に振り回されずに、なんとかやってこられたのは、この一節のおかげである。

河合長官には、なんとか回復してもらい、再び、現代の日本人に語りかけてほしい。 

*河合隼雄関連の記事
3月7日:『中年クライシス』
8月24日:気がかりな河合隼雄文化庁長官の容態
9月1日:『明恵 夢を生きる』を読み始める
9月5日:気がかりな河合隼雄文化庁長官の容態・その2
9月7日:『明恵 夢を生きる』を読み終わる
9月8日:90年代後半の世相を語る『縦糸横糸』を読む

11月1日:河合隼雄文化庁長官、休職

| | | コメント (6) | トラックバック (5)

2006年8月21日 (月)

早稲田実業の優勝と王監督

夏の高校野球、決勝の再試合は、4対3で、早稲田実業が3連覇を狙った駒大苫小牧を破り、初優勝を勝ち取った。(朝日新聞のニュースはこちら
4対1とリードされていた駒大苫小牧が、最終の9回表に2ランホームランで1点差まで追い上げ、「もしや」と思わせたところは、さすがである。そして、駒大苫小牧の最終打者が、エースで主将の田中。決勝2試合、計24イニングの死闘の締めくくりが、早稲田実業・斎藤、駒大苫小牧田中の対決で、最後は、斎藤が渾身の1球で、ライバル田中を空振り3振にうちとりゲームセット。最後まで、絵になる試合だった。
(新聞社にとっても、TV局にとっても、ドラマのあるメディア・イベントなったといえるだろう。)

今年は、春の王ジャパンのWBC優勝といい、野球の当たり年かもしれない。また、それは、王貞治の1年なのかもしれない。早実の斎藤投手はインタビューで「王先輩や荒木(大輔)先輩もできなかった、夏の大会の優勝ができてうれしい」と言い、一方、病床の王監督は、昨日こそ「球史に残るいい試合。両校ともお見事」と両校の健闘を讃えるコメントを出したが、今日は「斎藤投手の熱投の一言に尽きる」と後輩の力投を讃えていた。

あとは、プロ野球。セ・リーグは、中日の独走で面白みはないが、パ・リーグは、西武とソフトバンクの首位攻防が続く。2年連続してペナントレースで1位に輝きながら、プレーオフで勝ち上がってきたチームに敗れた王・ホークス、今年は、雪辱を果たせるだろうか。ソフトバンク・ホークスがパ・リーグで雪辱し、日本シリーズも制することのなれば、まさに「王貞治の1年」になる。これからは、パ・リーグ、ソフトバンク・ホークスの戦いぶりから目が離せない。

| | | コメント (1) | トラックバック (3)